睡眠負債

睡眠負債とは

睡眠負債とは、スタンフォード大学の William C. Dement 教授が提唱した概念で、日々の睡眠不足がまるで借金のように積み重なり、心身に様々な悪影響を及ぼす可能性のある状態を指します。

睡眠負債のリスク

わずかな睡眠不足の積み重ねが「債務超過」の状態に陥ると、日中のパフォーマンス低下はもとより、うつ病、がん、認知症といった深刻な疾病リスクを高める可能性も指摘されています。

日本人のおよそ4割は、1日の睡眠時間が6時間未満という睡眠不足の状態にあると言われています。しかし、睡眠不足であることを自覚できていないケースも少なくなく、睡眠負債が知らず知らずのうちに蓄積していくことがあります。

2003年にペンシルベニア大学が行った研究では、6時間睡眠を2週間続けた被験者グループの脳機能は、2晩徹夜したグループと同程度まで低下することが示されました。

睡眠負債の解消方法

睡眠負債を解消する根本的な方法は、不足している睡眠時間を確保することです。しかし、週末などに普段より長く眠る「寝だめ」は、生活リズムを崩し、逆効果になる場合があります。早稲田大学研究戦略センターの枝川義邦氏は、寝だめが生活リズムの乱れを引き起こし、「ブルーマンデー」に繋がる可能性があると指摘しています。

2013年にペンシルベニア州立大学の研究者らが30人の被験者を対象に行った実験では、短期間の長時間睡眠（寝だめ）によって眠気は解消されるものの、注意力や集中力の回復は期待できないという結果が出ています。

その他の対策

以下のような対策も、睡眠負債の解消に有効とされています。

仮眠: 睡眠の先行投資として、短時間の仮眠を取り入れる。
昼寝: 日中に15分程度の昼寝をする。
日光浴: 朝に日光を浴び、メラトニンの分泌を促す。
ブルーライト対策: 夜間のブルーライトを避ける。

睡眠のリン酸化仮説

理化学研究所と東京大学の上田泰己氏らは、CaMKIIαとCaMKIIβが睡眠促進リン酸化酵素であることを初めて特定し、「睡眠のリン酸化仮説」を提唱しました。

関連項目

概日リズム
概日リズム睡眠障害

もう一度検索