神田松鯉

三代目神田松鯉：講談界の重鎮、その波瀾万丈な人生と業績

三代目神田松鯉は、現代講談界を代表する名跡を受け継ぐ講談師です。1942年（昭和17年）9月28日生まれ。人間国宝に認定され、数々の賞を受賞するなど、その高い芸の腕前は広く知られています。

松鯉の経歴は、演劇や歌舞伎の世界を経て講談師となるという、独特のキャリアパスを描いています。前橋商業高校卒業後、劇団文化座や俳優集団民衆舞台で研鑽を積んだ経験は、彼の表現力に深みを与えたことは間違いありません。その後、歌舞伎役者二代目中村歌門に入門し、その後の講談師としての道を歩む上で大きな影響を与えたことは想像に難くありません。

1970年には二代目神田山陽に入門し、神田陽之介を名乗り、その後神田小山陽と改名。1973年には二ツ目、1977年には真打に昇進します。そして1992年、ついに三代目神田松鯉を襲名。名跡を継承した責任感と、それまでの経験が、彼の芸をさらに高みに押し上げました。

松鯉の芸の幅広さにも注目に値します。得意ネタは「村井長庵」など150席にも及びます。さらに、1980年から独自に展開している「ビジネス講談」は、従来の講談の枠にとらわれない斬新な試みであり、ビジネスパーソンにも多くの支持を集めています。これは、彼の多様な経験と洞察力の賜物と言えるでしょう。

彼の活躍は、講談界にとどまりません。2019年には、重要無形文化財保持者（人間国宝）に認定され、講談師としては6代目一龍齋貞水に次いで2人目という快挙を成し遂げました。これは、彼の芸の卓越性と講談界への貢献を物語るものです。

数々の賞や栄典も、彼の功績を証明しています。放送演芸大賞ホープ賞、文化庁芸術祭賞、板橋区民栄誉賞、春の叙勲旭日小綬章受章、浅草芸能大賞など、その受賞歴は輝かしいものです。そして2023年には「スターの手型」被顕彰者にも選ばれました。

講談界への貢献も顕著です。日本講談協会では会長、相談役、名誉会長を歴任し、落語芸術協会では参与、相談役を務めています。これらの役職を通して、講談界の発展に大きく貢献したことは言うまでもありません。

プライベートでは、俳句、篠笛、ゴルフを趣味としています。2024年の取材では、3年前に鼻の皮膚がんを患い、手術を受けたことを明らかにしました。それでもなお第一線で活躍を続ける彼の、芸への情熱と強い意志が感じられます。

著書『善悪リーダー心得帖―神田松鯉ビジネス講談集』、『人生を豊かにしたい人のための講談』は、彼のビジネス講談の思想や人生観を知る上で貴重な資料です。また、テレビ番組「ワルイコあつまれ」、ラジオ番組「小痴楽の楽屋ぞめき」、DVD『講談浪曲大公演』など、メディアへの出演も多数あります。

神田松鯉一門には、真打、二ツ目、前座と多くの弟子がおり、その育成にも力を注いでいます。彼の指導の下、講談界の未来を担う若手講談師が育っています。

三代目神田松鯉は、卓越した芸、多様な活動、そして後進育成への貢献と、講談界に多大な影響を与え続ける、まさに現代講談界の巨匠です。彼の今後の活躍にも期待が高まります。

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