福田豊四郎

福田豊四郎：日本画の革新者、秋田の叙情を描き続ける

福田豊四郎（1904-1970）は、秋田県に生まれた日本画家です。近代日本画壇において、革新的な試みと独自の叙情性を持ち合わせた稀有な存在として知られています。本名は福田豊城。俳優の福田豊土を息子に持ちます。

師事と初期活動

15歳で画家を志した豊四郎は、京都で洋画家の鹿子木孟郎に師事しデッサンを学びました。その後、川端龍子の作品に感銘を受け、東京で師事しますが、龍子の勧めで再び京都へ。そこで日本画家の土田麦僊に師事し、日本画の基礎を徹底的に学びました。

1924年、第4回国画創作協会展で初入選を果たします。この協会は、文展の審査に不満を持つ革新的な画家たちが結成した団体であり、豊四郎は1928年の解散まで積極的に作品を発表し続けました。京都市立絵画専門学校（現・京都市立芸術大学）卒業後も、新樹社、青龍社など様々な団体に参加、活動の場を転々とする中で、常に新しい表現を模索しました。

モダニズムの追求と日本画革新運動

1930年、26歳の若さで第11回帝展で特選を受賞。この時、小松均、吉岡堅二ら新進気鋭の画家たちと出会い、1934年には彼らと共に「山樹社」を結成します。これは、当時の日本画壇へのアンチテーゼとして、洋画家たちとの交流も深く、前衛的な試みを積極的に行う集団でした。

その後、「新日本画研究会」、「新美術人協会」と、新たな団体を次々に設立し、積極的に日本画のモダニズム化を推進。戦前の日本画革新運動を牽引する存在となりました。代表作の一つである『樹氷』（1937年）では、郷里の八幡平の風景を、洋画的なモダンなフォルムと伝統的な日本画の表現を融合させ、革新的な表現を試みています。

戦争画と戦後の活動

1938年、陸軍従軍画家となり、吉岡堅二と共に満州、華北、華中へ赴き、多くのスケッチを残しました。太平洋戦争中は、陸軍美術協会にも所属し、作戦記録画などを制作。中でも『英領ボルネオを衝く』は、写実的な描写と日本画独自の装飾性を巧みに融合させた作品です。戦後はGHQによって没収されたものの、後に東京国立近代美術館に収蔵されています。

戦後、山本丘人、上村松篁、吉岡堅二らと「創造美術協会」を結成し、「世界性に立脚する日本絵画の創造」をスローガンに掲げ活動しました。この協会で発表された『秋田のマリヤ』は、戦後の混乱期における日本のアイデンティティを問いかける力作として高く評価されています。その後、同協会は新制作協会に合流、豊四郎は設立委員を務めました。

独自の画風と多様な活動

豊四郎は、「私の作風はロマンティックレアリスムである」と述べており、その作品には秋田の風景や人々の温かさ、叙情的な情感があふれています。『海女』、『八郎潟凍漁』、『五月山湯』など、様々な作品で、キュビスムやシュルレアリスムの影響も感じられます。また、平面的な日本画の特性を活かしつつ、奥行きや量感、質感などを追求し、独自の表現を確立しました。

さらに、新聞挿絵の分野でも活躍し、井上靖、今日出海、林芙美子、三浦綾子など多くの小説家の作品に挿絵を提供しています。著書も多く、『美しさはどこにでも』はサンケイ出版賞を受賞しています。

晩年と評価

晩年は病に倒れることもありましたが、精力的に創作活動を続けました。1970年、65歳で死去しました。

福田豊四郎は、伝統的な日本画の技法を踏まえつつ、モダニズムや西洋美術の影響を取り入れ、独自の画風を確立した画家です。常に革新を追求し続け、戦前・戦後を通じて日本画壇に大きな影響を与えました。その作品は、秋田の自然や人々への深い愛情、そして時代を超越した普遍的な美しさに満ち溢れています。彼の功績は、現代においても高く評価されており、日本画の歴史における重要な位置を占めています。

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