吉岡堅二

吉岡堅二の生涯と業績

吉岡堅二（よしおか けんじ）は、1906年10月27日に東京・本郷に生まれた日本画家です。父は著名な日本画家の吉岡華堂であり、家庭環境から自然に芸術の道へと進むこととなります。彼は、日本画の技法を学ぶために野田九浦に師事し、その指導のもとで技術を磨きました。

若き日の吉岡は、画壇での名声を急速に高めていきます。24歳の時には、藤田嗣治の友人である洋画家高崎剛の留守宅で制作した作品「奈良の鹿」が帝展で特選となり、その才能が広く認知されることとなりました。この成功は彼の自信を高め、新たな創作の場へと彼を導くきっかけとなりました。

彼は、福田豊四郎や小松均と共に山樹社を結成し、さらには豊四郎や岩橋英遠と共に新日本画研究会を立ち上げました。そこで彼らは日本画の革新運動を展開し、大胆なフォルムと豪快な作品で画壇に新風を吹き込み、従来の枠を超えた表現を追求しました。特に1933年には帝展に「小憩」を出品し、特選を受賞、さらなる注目を集めることになります。

1939年になると、陸軍美術協会に参加し、第二次世界大戦中には豊四郎と共に大日本帝国陸軍従軍画家として満州や華北、華中などで活動しました。戦争という過酷な環境の中、人々の苦しみや戦争のリアルな姿を描こうとする彼の姿勢は、後の日本画における重要なテーマとなります。戦争画として残された彼の作品のいくつかはGHQにより没収され、のちに1970年に無期限貸与の形でアメリカから返還されました。彼の代表的な戦争画には『カリジャティ西方の爆撃』（1942年）、『ブラカンマティ要塞の爆撃』（1944年）、『高千穂降下部隊レイテ敵飛行場を攻撃す』（1945年）があります。

戦後、吉岡堅二は新たな芸術の形を模索し続けます。山本丘人や上村松篁、豊四郎、高橋周桑らと共に創造美術を結成し、西洋と東洋の技術を融合させた常に新しい日本画のスタイルを追求しました。これにより彼には「伝統日本画の亡霊と闘う画家」という評価が与えられるようになったのです。

晩年、彼は1971年に日本芸術院賞を受賞し、東京芸術大学の教授を務めました。1969年には同大学を退官し、芸術教育にも力を注ぎました。90歳でこの世を去るまで、吉岡堅二は日本画の革新に挑戦を続け、多くの後進に影響を与えました。彼の作品と思想は、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

参考文献

• - 油井一人編『20世紀物故日本画家事典』美術年鑑社、1998年
• - 山田論、中村暁子、保崎裕徳編集『「画家たちと戦争：彼らはいかにして生きぬいたのか」展』名古屋市美術館、2015年

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