科学と学習

「科学と学習」：小学生の知的好奇心と学習意欲を育んだ学習雑誌

かつて学研教育出版（学研グループ）から刊行されていた小学生向け学習雑誌「科学と学習」は、昭和から平成にかけて多くの子供たちの学習を支え、日本の教育史に大きな足跡を残しました。一般的には「科学と学習」もしくは「学習と科学」と呼ばれ親しまれていましたが、実際には『○年の科学』と『○年の学習』という名称で、1年生から6年生までの各学年向けに発行されていました。

これらの雑誌は、単なる学習内容の提供にとどまらず、各号に付録として実験キットや工作キット、学習用教材が付属しており、子供たちが実際に手を動かしながら学習を進められる工夫が凝らされていました。1946年の創刊以来、長きに渡り愛され続け、特に1970～80年代には、第2次ベビーブーム世代である団塊ジュニア世代の小学生を中心に爆発的な人気を博しました。1979年には『科学』誌が月間670万部という驚異的な発行部数を記録したこともありました。

雑誌の内容と特徴

『科学』誌は理科と算数を中心とした内容で、「想像力・考える力を養う　切る・はる・確かめる」をキャッチフレーズに掲げ、ページの一部を切り抜いたり、折り曲げたり、糊付けするなど、子供たちが自ら手を動かしながら理解を深められる「立体編集」という独自の編集手法が採用されていました。一方、『学習』誌は国語と社会を主軸に据え、読み物の割合が多く、より幅広い学習内容をカバーしていました。両誌とも、学習指導要領に則した内容で構成され、特に低学年には教科書体を使用するなど、子供たちの学習を丁寧にサポートする配慮が随所に見られました。

販売方法と学研コンパニオン

当初は学校を通じて販売されていましたが、1971年に日本消費者連盟から「学校を商売の場所にするな」との批判を受け、1972年には公正取引委員会の勧告に基づき、学校での販売を中止。家庭への訪問販売を主とする「学研コンパニオン」制度に移行しました。学研コンパニオンは、多くの家庭を訪問し、学習雑誌や関連商品を販売する役割を担い、「学研のおばちゃん」として広く知られるようになりました。この販売方法の転換は、結果的に雑誌の販売拡大に大きく貢献しました。

アニメ化された人気連載漫画

「科学と学習」には、数々の魅力的な連載漫画が掲載されていました。1980年代には、『科学』の『チックンタックン』や『学習』の『ミラクルジャイアンツ童夢くん』がテレビアニメ化されるなど、社会現象にも発展するほどの人気コンテンツとなりました。特に1970年代後半から1980年代にかけては、石ノ森章太郎氏や永井豪氏といった人気漫画家が多数の作品を手がけ、雑誌の魅力をさらに高めていました。

少子化と時代の変化による休刊

1990年代以降は、少子化や共働き世帯の増加、価値観の変化など、様々な社会情勢の変化によって購読者数が減少。月刊誌から学期刊への移行や店頭販売へのシフトなど、時代の変化に対応した様々な試みがなされました。2003年には大人向けの『大人の科学』も刊行されましたが、児童向け雑誌の販売部数の減少に歯止めをかけることができず、2009年冬号の『学習』誌、2010年3月号の『科学』誌をもって休刊となりました。

関連商品：問題集『毎日の学習』と『トップラーン』

「科学と学習」と並行して、小学生向けの問題集である『毎日の学習』（通称：毎学）と『トップラーン』も刊行されていました。どちらも完全教科書準拠で、『毎日の学習』は基礎レベル、『トップラーン』は標準レベルの問題が掲載され、子供たちの学習をサポートしていました。『毎日の学習』には「ちゃっぽくん」というキャラクターが登場し、学習意欲を高める工夫がされていました。これらの問題集も、学習雑誌と同様に学研コンパニオンによって訪問販売されていました。

復活と未来

長らく休刊となっていた『科学』誌ですが、2022年7月に12年ぶりに復刊を果たしました。これは、科学への関心を育むことの重要性と、子供たちの学習へのニーズが依然として高いことを示しています。かつて多くの子供たちの知的好奇心と学習意欲を刺激してきた「科学と学習」の精神は、現代においても、その価値を失うことなく、未来へと受け継がれていくことでしょう。

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