紫ババア

紫ババア：トイレに潜む紫の老婆

日本の学校怪談や都市伝説として知られる「紫ババア」は、全身紫色で身を包んだ老婆の姿で描かれることが多いです。その特徴は、腰まで届く長い紫色の髪、紫の着物を身につけ、紫の口紅を塗った唇、そして鋭く長い爪を持つ老婆です。

紫ババアの出現場所は、多くの場合、学校のトイレとされています。突然現れることもあれば、トイレのドアをノックすると現れるという話もあります。また、鏡から飛び出してきたり、トイレの穴から出現するという地域特有の伝承も存在します。東京都東久留米市では、トイレの鏡から飛び出してくるという話が有名です。ある話では、トイレの穴を塞いでいた紙が破れ、そこから紫ババアが現れたと伝えられています。

紫ババアに遭遇した者は、肝臓を奪われるとされています。しかし、この恐ろしい老婆から逃れる方法も伝えられています。「ムラサキムラサキムラサキ」と3回連続で唱えることで、紫ババアは退散するとされています。また、紫色の物を持ちながら「ムラサキ」と唱えるだけでも効果があるという説もあります。これらの呪文は、紫ババアを鎮める、もしくは追い払うための護符のような役割を果たすものと考えられます。

紫ババアは、三時ババアのように特定の時間に現れるという決まりはなく、不意に遭遇する可能性がある点も恐怖感を煽ります。子供たちが不用意に紫ババアを呼び寄せてしまうという派生話も存在し、その不気味な存在感は、多くの人の心に恐怖と忌避感を植え付けています。

東京都近郊で語り継がれる紫ババアの起源に関する物語があります。かつて、貧しい家に住む少女は、たった一枚の古着しか持っていませんでした。ある日、裕福な家から風で飛んできた紫色の高価な着物を拾った少女は、その家の者から泥棒呼ばわりされ、汚名を着せられたまま、悲しみのうちに老いて亡くなりました。そして、その裕福な家の跡地に建てられた学校のトイレで、紫ババアが目撃されるようになったというのです。この物語は、紫ババアという存在が、貧しさや不正、そして社会の不平等によって生み出された怨念の象徴である可能性を示唆しています。

紫ババアは、単なる怪談や都市伝説としてだけでなく、社会や人間の負の側面を映し出す鏡として解釈することもできるでしょう。その恐ろしい姿と悲しい起源は、人々の心に深く刻まれ、語り継がれることで、社会への警鐘、あるいは忘れ去られた者の魂の叫びとして存在し続けています。様々なバリエーションが存在する紫ババアの物語は、地域や時代によって異なる解釈や意味合いを含みながら、人々の間で語り継がれ、新たな恐怖と謎を生み出し続けているのです。

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