組体操

組み立て体操：歴史、呼称、特徴、事故と対策

はじめに

組み立て体操とは、複数の人が協力して行う、道具を使わない集団演技です。日本では学校行事の定番として知られていますが、近年は安全面への懸念から、その是非が議論されています。本稿では、組み立て体操の歴史、様々な呼称、特徴、世界での展開、そして、大きな問題となっている事故と、それに対する対策について解説します。

歴史

組み立て体操の起源は古く、古代エジプトや中国の壁画や土偶にも類似した表現が見られます。近代的な組み立て体操は19世紀のドイツで発達し、国民の健康増進や軍事教練を目的として行われるようになりました。その後、欧米諸国、そして日本へと広まりました。20世紀には、チェコスロバキアなどで数千人規模の大規模な演技が行われるなど、世界的に普及しました。しかし、21世紀に入ると大規模な演技は減少傾向にあり、現在では日本、香港、マレーシア、ブラジルなどで盛んです。日本では、戦後の一時期、学校教育要領に図解が掲載されていましたが、その後削除され、現在は学校行事における自主的な活動となっています。

呼称

日本では、「組体操」と呼ばれることが多く、倒立や回転運動を含むものは「タンブリング」や「ピラミッド」とも呼ばれています。戦前には「回転運動」「組み立て運動」と呼ばれ、明治神宮競技大会でも披露されました。しかし、軽業的な要素が強すぎるものは教育的ではないと批判されてきました。「組み立て体操」に相当する英語表現はまだ統一されておらず、「mass gymnastic」や「gymnastic formation」などが用いられています。

特色

組み立て体操は、競技ではなく、集団の協調性と一体感を表現することが目的です。日本の学校では、運動会などで披露され、生徒の訓練成果や学校教育の成果を示す側面も持ちます。そのため、赤組白組ではなく、学年全体や男女合同といった編成が一般的です。古典的な演技には、数十秒間の静止姿勢を保持するものが含まれており、高いバランス感覚と筋力、持久力が求められます。小学校高学年、中[[学校]]、高校で行われることが多いですが、幼稚園やダンスのクライマックスでも用いられることがあります。演技は、笛やかけ声、音楽などによって同期して行われます。

演技

日本の学校では、基本的な二人組の演技から練習を始め、徐々に高度な技へと進んでいきます。一般的に、身長や体重の軽い人が上のポジションを務めます。V字バランスや肩倒立といった個人技、二人組の倒立や肩車、複数人の小集団技、そしてピラミッドやタワーといった大技がクライマックスとして行われます。事故発生時には、負傷者を速やかに移動させ、代替者を投入する対応がとられるのが一般的です。演技中は、苦痛や恐怖を表に出すことは避けられます。

世界各地のNGOによる演技は多様で、「人間ロケット」「風車」「人間城壁」「歩行ピラミッド」など、創造性に富んだ演目が披露されます。マレーシア、香港、ブラジル、インドネシア、フィリピンでは、日本の技を基盤としながらも独自の進化を遂げています。近年は、静的な演技だけでなく、動的な演技も増加しています。

規模

組み立て体操は、二人組から数百人規模まで、様々な規模で行われます。参加者が多いほど、集団美が強調され、観衆に深い感動を与えます。規模に応じて、舞台、体育館、グラウンドなどが使用されます。過去には、数千人規模の演技が行われた例もあります。

世界の組み立て体操

日本では組み立て体操が盛んに行われていますが、これは世界的に見ると珍しいケースです。西側諸国では一般的ではなく、国際的なスポーツ大会でも見られることは少なくなっています。中国ではかつて軍隊で行われていましたが、現在は行われていません。北朝鮮のアリラン祭では大規模なアクロバット体操が披露されますが、日本の組み立て体操とは異なります。アメリカでは、近年、小規模な演技が行われるようになっています。

創価学会インタナショナルなどのNGOが、ブラジル、マレーシア、韓国、インドネシア、フィリピン、アメリカなどで組み立て体操の普及に貢献しています。これらの国々では、組み立て体操が地域文化になりつつあります。

訓練

組み立て体操は、多人数の参加と長時間の練習を必要とするため、熱中症や怪我のリスクが高まります。そのため、安全な練習方法の確立と、参加者の体力向上のためのトレーニングが不可欠です。日本スポーツ振興センターは、高層の組み立て体操は危険であるとして、注意喚起を行っています。

事故と対策

組み立て体操は、落下や衝撃による怪我のリスクが非常に高く、多くの事故が発生しています。過去には死亡事故や重症事故も発生しており、学校や自治体側の安全配慮義務違反が問題となるケースもあります。事故は、練習期間に集中する傾向があり、ピラミッドやタワーだけでなく、肩車や倒立といった比較的簡単な技でも発生します。

事故防止のため、様々な対策が講じられていますが、依然として事故は発生しています。自治体によっては、組み立て体操の中止や禁止を決定しているところもあります。文部科学省も事故防止のための通知を出しており、国としても安全対策の重要性を認識しています。専門家からは、高層のピラミッドは危険であるという指摘があり、安全な演技の基準や指導方法の改善が求められています。

人間起こし

近年、高層の組み立て体操に代わるものとして「人間起こし」が普及しつつあります。しかし、人間起こしでも頭部や頚部の怪我といった事故が発生しており、安全対策は依然として重要です。

参考文献

(参考文献リストは省略)

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