縦拳

縦拳（たてけん）について

縦拳とは日本拳法などの格闘技で使用される技術の一つで、拳を縦に構えた状態で相手に突き出す攻撃方法を指します。この技は側拳や直突きとも呼ばれ、主に相手の顔面や胴体を狙った正面からの打撃に用いられます。ボクシングのストレートや、空手における正拳突きに相当しますが、典型的なストレートや正拳突きとは異なり、縦拳では前腕のねじりを伴わないという特徴があります。一般に「縦拳」と指される際は、真っ直ぐに突く動作を指すことが多いです。

縦拳は日本拳法を含む多くの武道で重視されており、少林寺拳法や太極拳、自衛隊の徒手格闘術でも採用されています。また、縦拳の一種である鉄槌打ちと呼ばれる技は、拳ではなく小指の付け根の部分を使用してハンマーのように打撃する方法で、これも貴重な技術として位置付けられています。

縦拳と平拳の比較

縦拳と平拳では、いくつかの特性において大きな違いがあります。縦拳は肘が下を向くため、特に上下の動きに強く、左右の動きには弱い傾向があります。これに対し、平拳は肘が外を向くため、左右の動きには強いものの、上下の動きには劣ります。

• - 縦拳の特性

- 上下の振れやすさが高く、左右の振れにくさがあります。これにより、相手の攻撃を防ぐ動き（パリング）に強いため、逆に横への回避には不向きです。
- 脇を締めることができ、体重を乗せた強い打撃を簡単に行うことが可能です。
- 手首のスナップがほとんど効かず、その代わりに衝撃に対する手首のブレが少なくなるため、しっかりとした衝撃を与えやすくなります。
- 初速は平拳に劣りますが、素早く突くことができ、特にジャブではその差が顕著です。
- フックによる攻撃では、遠心力がほとんど効かないため、効果的な攻撃が難しくなります。

• - 平拳の特性

- 左右に振れることが容易で、特に肘の内側への回避には非常に優れています。
- 脇が開くため、平拳を打つ際には脇を締める練習が必要です。
- 手首のスナップを使い、様々なタイプの拳を打ち分けることが可能です。たとえば、波動拳や他の種類の長い拳を打つこともできます。
- 腰を屈めた状態でも打つことができ、エネルギーをより効率的に伝えることができます。

特に注意すべき誤解

「縦拳はガードをすり抜けやすい」との誤解が広がっていますが、実際にはそうではありません。ガードは受け流すものであり、ガードをすり抜けた場合にも攻撃が弾かれる可能性があります。この誤解は、縦拳の初動が速いため、対応しきれないことから生まれたのかもしれません。

日本拳法における直突き

日本拳法では、縦拳や平拳が「直突き」として使われることがあるため、「日本拳法において縦拳は伝統的に直突きと呼ばれる」という主張は誤りです。直突きは「足の踏み込みや腰・肩の回転力を活用して効率的に拳に速度を伝達する動作」のことを意味しており、縦拳でも平拳でも直突きは可能です。

日本拳法協会では基本重視で縦拳を、威力重視で平拳を採用しています。このため、初学者には縦拳が適しており、威力を求める場合は平拳が選ばれます。

まとめ

縦拳は多くの武道で幅広く利用されている基本的な攻撃技です。その特性やメリットを理解し、平拳との比較を意識することで、さらなる技術向上が期待できます。

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