羊飼いの王様

モーツァルト作曲 オペラ『羊飼いの王様』

『羊飼いの王様』（Il rè pastore）K.208は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲したオペラで、『牧人の王』とも訳されます。1775年4月23日にザルツブルクで初演されたこの作品は、モーツァルトが19歳の時に作曲した劇的セレナータで、オーストリア皇子たちの接待のために宮廷で演奏会形式で上演されました。

概要

原題：Il rè pastore
原作：トルクァート・タッソ『アミンタ』
台本：ピエトロ・メタスタージオ
作曲：ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
初演：1775年4月23日、ザルツブルク

登場人物

アミンタ（ソプラノ）：羊飼いで、シドンの王位継承者。
エリーザ（ソプラノ）：アミンタに愛されている羊飼いの娘。
タミーリ（ソプラノ）：シドンの前王の娘。
アジェーノレ（テノール）：シドンの貴族で、タミーリの恋人。
アレッサンドロ大王（テノール）：マケドニア国王。

あらすじ

第1幕

物語はシドンの町に近い広々とした野原で始まります。シドンの王位継承者であるアミンタは、父の死後、羊飼いとして生活し、羊飼いの娘エリーザと恋に落ちます。二人は、マケドニア国王アレッサンドロ大王が政権を握る世の中になっても、自分たちには関係のないことと、愛のある生活に満足していました。

しかし、アレッサンドロがシドンを攻略したのは、ストラトンの暴政から人々を解放するためであり、アミンタこそが新しい王にふさわしいと説得します。しかしアミンタは、現在の生活に満足していると王位を拒否します。

一方、エリーザはアレッサンドロに追放されたストラトンの娘タミーリを匿っていました。タミーリは、恋人のアジェーノレがアレッサンドロの臣下になったことを嘆きますが、アジェーノレは変わらぬ愛を誓います。

アジェーノレはアレッサンドロを伴いアミンタの元へ現れ、ストラトンに追放された王は息子アブダロニュモスをアジェーノレの父親に託し、老羊飼アルチェーオが父親代わりとなって彼を育てたことを明かします。そして、アミンタこそが正当な王位継承者だと告げます。突然の知らせに驚くアミンタに、エリーザは変わらぬ愛を誓います。

第2幕

第1場 アレッサンドロ大王の陣地

羊飼いの娘エリーザがアミンタに会いに来ますが、アジェーノレに制止され、失望して帰っていきます。アミンタはエリーザを追おうとしますが、またもアジェーノレに止められます。

アレッサンドロ大王はアミンタに王の衣装を着るように命じます。アジェーノレからタミーリが生きていることを知らされると、アレッサンドロ大王はタミーリとアミンタを結婚させ、二つの王家を統合することを提案します。アジェーノレはタミーリとの結婚を願い出る機会を失ってしまいます。

第2場 大きな洞穴

王位とエリーザのどちらを選ぶかで悩むアミンタは、ついに決心しアレッサンドロ大王のもとへ向かいます。その後、エリーザが現れ、アジェーノレからアミンタとタミーリの結婚の噂を聞き、涙ながらに去って行きます。さらにタミーリが現れ、アジェーノレが王国のために自分を捨てたと責めます。

第3場 シドンのヘラクレス宮殿の外庭

タミーリはアレッサンドロ大王に、不遇の身のときにも自分を愛してくれたアジェーノレと別れて王妃になることはできないと訴えます。エリーザも現れ、アミンタを奪わないでほしいと懇願します。

そこにアミンタが現れ、王位をアレッサンドロ大王に返し、王国をタミーリに与えてほしいと願い出ます。そして、自分はエリーザと共に羊飼いとして生きていくと告げます。彼らの愛に心を打たれたアレッサンドロ大王は、アミンタとエリーザの結婚を許し、シドンを二人に与えることを決めます。さらにタミーリとアジェーノレには別の王国を与えることを約束し、一同はアレッサンドロ大王を称賛します。

主要な曲目

No.01 序曲
No.02 アリア「森に、牧場に」 selva, al prato, al fonte （エリーザ）
No.03 アリア「穏やかな空気と晴れた日々」Aer tranquillo e dì sereni （アミンタ）
N0.10 アリア/ロンド「あの人を僕は愛そう、心変わりはすまい」L'amerò, sarò costante （アミンタ）

参考文献

石戸谷結子『オペラは見てのお楽しみ』（1997年、共同通信社）

外部リンク

羊飼いの王様の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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