肉体美

映画『肉体美』の概要

『肉体美』は、1928年12月1日に公開された日本映画で、松竹キネマによって制作され、配給されました。監督は著名な映画監督小津安二郎が務め、当時としては斬新なスタイルやテーマが特徴です。この作品はモノクロで、上映時間は54分と短めです。

本作は、小津監督の名を広く知らしめるきっかけとなった作品でもあり、ナンセンスコメディの要素がありながらも、深い人間ドラマが描かれています。初回の興行は電気館で行われ、一般の観客からも好評を得ました。興味深いことに、脚本は現在も川喜多記念映画文化財団に保存されているものの、原版や上映用プリントは失われてしまっています。

あらすじ

物語は、失業中で恐妻家の一郎を中心に展開します。一郎は、家の中で妻の指示に従い、家事や使い走りをしながら自分の情けない体格と向き合っています。そんな一郎の妻は画家であり、一郎は彼女の絵のモデルとしても活躍しています。

ある日、金持ちのパトロンである大倉が彼の妻の絵の進行具合を見に訪れ、図々しくも一郎の前で妻と親しげにふるまいます。この出来事が一郎の心に火を灯し、彼は画家としてのスキルを磨く決意を固めます。彼は、絵を勉強し始め、本格的に挑戦し始めるのです。

展覧会が近づく中、妻は砲丸投げの選手である学生・遠山をモデルに新しい作品の制作に取り組みます。一方で、一郎もバーのマダムのために絵を描くことになります。やがて展覧会の日が訪れ、妻の作品が会場に運ばれることになりました。しかし、何と一郎の描いた絵も一緒に運ばれて出品されてしまいます。

展覧会の審査結果が発表され、一郎の家に新聞記者が訪れますが、なんと入選作は妻の絵ではなく、一郎の作品だったのです。この結果を受け、一郎の妻は絵筆を捨て、彼のモデルとして従順な役割を果たすようになります。二人の関係や立場が一変し、物語は意外な展開を迎えます。

スタッフおよびキャスト

本作の監督および潤色は小津安二郎が担当し、脚本は伏見晁が執筆しました。撮影は茂原英雄が担当し、全体の作品を緻密に仕上げています。

キャストには、主人公一郎役を務めた斎藤達雄の他、妻律子役の飯田蝶子、大倉伝右衛門役の木村健児、学生遠山役の大山健二などが参加しています。また、坂本武や日守新一もノンクレジットで出演しています。

結論

『肉体美』は、小津安二郎監督による早期の代表作であり、視覚的にも物語的にも意義深い作品です。この映画は、単にコメディとして楽しむだけでなく、男女の関係や芸術家としての奮闘を通じて人生の葛藤を描いており、今なお多くの人々に愛される作品です。

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