日守新一

日守新一（ひもり しんいち）

日本の映画史に名を刻む名優

日守新一は、1907年1月10日に東京で生まれ、1959年9月12日に心臓麻痺で急逝した日本の俳優です。本名を守山一雄といい、戦前、戦中、戦後と松竹映画を中心に活躍しました。その独特な存在感と演技力で、多くの映画ファンを魅了し、日本の映画史に欠かせない名優の一人として知られています。

生い立ちと映画界入り

東京の神田で生まれ育った日守は、錦華尋常小学校を卒業後、病弱のため自宅療養を余儀なくされました。療養中に文学に触れ、武者小路実篤に傾倒したと伝えられています。1924年、松竹蒲田撮影所に入社し、大部屋俳優としてのキャリアをスタートさせました。その後、1929年に小津安二郎監督の『大学は出たけれど』で重要な役を得て、才能を開花させました。小津監督の作品にはその後も多く出演し、主役、準主役としてその存在感を示しました。また、五所平之助監督の日本初のトーキー映画『マダムと女房』にも出演しています。

名バイプレイヤーとしての活躍

1931年には準幹部に昇進し、1936年には小津安二郎監督の『一人息子』で主演を務めました。戦中、戦後も松竹映画には欠かせない存在となり、数々の作品に出演しました。特に、生活に疲れたサラリーマン役は彼の得意とするところで、その演技は観客の共感を呼びました。1952年には黒澤明監督の『生きる』で、志村喬演じる主人公の部下である市役所職員役を演じ、脇役ながらも重要な役柄を見事に演じました。その後も喜劇やメロドラマなど幅広いジャンルの作品で活躍しました。

突然の死と惜しまれる名優

1959年9月12日、心臓麻痺のため神奈川県鎌倉市の自宅で急逝しました。その死は映画界に大きな衝撃を与え、松竹は河村黎吉に次いで2度目となる社葬を執り行いました。友人であった吉村公三郎監督は、日守を「知的でとぼけた味があり、話術が巧みな俳優だったが、喘息が持病で結局はこの病気で亡くなった。惜しまれた名優の一人である」と回想しています。

主な出演作品

日守新一は、数多くの映画に出演しており、以下はその一部です。

1925年：『乃木大将伝』- 渡辺中尉
1926年：『お坊ちゃん』- 支那博士
1929年：『学生ロマンス 若き日』- スキー部主将・畑本
1929年：『浮草娘旅風俗』- 薬行商人・清吉
1929年：『大学は出たけれど』- 洋服屋
1930年：『若者よなぜ泣くか』- 新聞記者
1931年：『マダムと女房』- 見知らぬ男
1932年：『金色夜叉』- 浜作の主人
1932年：『忠臣蔵』- 幇間狸六
1933年：『君と別れて』- 客
1933年：『僕の丸髷』- 社員小山
1933年：『大学の若旦那』- ラグビー選手三宅
1933年：『女学生と与太者』- 近藤の秘書
1934年：『大学の若旦那・武勇伝』- 友人・落合
1934年：『限りなき鋪道』- 山村真吉
1935年：『若旦那 春爛漫』- 学生
1935年：『春琴抄 お琴と佐助』- 幇間
1935年：『花婿の寝言』
1936年：『若旦那 百万石』- 味噌店の若旦那・平太郎
1936年：『家族会議』- 番頭
1936年：『一人息子』- 野々宮良助
1937年：『金色夜叉』- 実業家
1937年：『花形選手』- 森
1937年：『浅草の灯』- 太公
1938年：『按摩と女』- 三沢福市
1939年：『子供の四季 春夏の巻』- 俊一
1939年：『子供の四季 秋冬の巻』- 俊一
1939年：『南風』- 人事課長
1939年：『花のある雑草』- 秋山先生
1939年：『五人の兄妹』- 次男要二
1939年：『新しき家族』- 秋山
1939年：『暖流』- 絲田
1940年：『信子』- 泥棒
1941年：『歌女おぼえ書』- 医者
1941年：『暁の合唱』- 萩村運転手
1941年：『簪』- 広安
1942年：『父ありき』- 内田実
1942年：『男の意氣』- 久どん
1944年：『歓呼の町』- 印刷屋
1946年：『待ちぼうけの女』- 杉原市郎次
1947年：『象を喰った連中』
1947年：『深夜の市長』- 銀行員
1947年：『安城家の舞踏会』- 由利武彦
1948年：『懐しのブルース』- 小田切進
1949年：『踊る龍宮城』- 町長多井氏
1949年：『小原庄助さん』- 吉田次郎正
1950年：『帰郷』- 小野崎公平
1950年：『醜聞』- 編集員朝井
1950年：『女優と名探偵』- 探偵
1952年：『生きる』- 木村
1952年：『カルメン純情す』- 野村
1953年：『日本の悲劇』- 一造
1953年：『君の名は 第2部』- 仁科
1954年：『家族会議 東京篇・大阪篇』- 尾上惣八
1954年：『この広い空のどこかに』- 今井
1954年：『陽のあたる家』- 山田徳二
1956年：『千万長者の恋人より　踊る摩天楼』- 爺や＝五十嵐半太夫
1958年：『ボロ家の春秋』- 古畑団長
1958年：『オンボロ人生』- 御前
1959年：『三人姉妹』- 父・京太

日守新一は、その演技力と人柄で、多くの映画ファンに愛された名優です。彼の出演作品は、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

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