自分史

自分史とは

自分史とは、個人が自身の生涯や半生を文章で記録したものです。自伝や自叙伝と似ていますが、自分史は必ずしも著名人や成功者の記録ではなく、ごく普通の人々が自身の人生を振り返り、記録するものです。

自分史の概要

従来、自伝や自叙伝は、成功した個人の業績や生涯の記録として存在していましたが、自分史はより個人的な視点から、自身の経験や感情を率直に綴る点が特徴です。1980年代以降、自費出版が普及したことで、自分史を書籍として刊行する人が増えました。これは、自身の生きた証を後世に残したいという、終活の一環としての目的もあります。

歴史的変遷

「自分史」という言葉が一般に広まったのは、歴史家の色川大吉氏が1975年に発表した『ある昭和史 - 自分史の試み』がきっかけと言われています。色川氏は、専門の歴史家が個人の記録を歴史的価値を持つものとして捉えるべきだと提唱しました。この中で紹介された橋本義夫氏の「ふだん記運動」は、戦後の生活綴り方運動に繋がる民衆記録運動の一環とも言えます。

また、昭和初期から昭和20年代の戦争体験を記録する運動も、反戦平和運動と結びつき、多くの個人記録を生み出しました。

近年では、自分史が高齢者向けの生涯学習の一環として捉えられ、地方自治体による地域活動としても行われています。しかし、高齢者向けに高額な自分史を売りつける悪徳商法も存在するため、注意が必要です。

文化的な意義

自分史は、以下のような多様な意義を持っています。

民衆の表現活動: 個人の声や経験を社会に伝える手段として
歴史の記録: 戦争体験など、風化しつつある歴史を後世に伝える記録として
生涯学習: 高齢者の学習意欲を満たし、自己理解を深める機会として
精神療法: 過去を振り返ることで、自己肯定感を高めたり、精神的な癒しを得たりする効果も期待されています。
自費出版ビジネス: 個人の出版活動を支援するビジネスとしての側面も存在します。

また、自分史をテーマとした表彰制度も存在します。

私の物語─日本自分史大賞: 日本自分史学会
日本自費出版文化賞（個人誌部門）: 日本自費出版ネットワーク
自分史文学賞: 北九州市

自分史の活用

自分史は、著者が亡くなった際に会葬御礼として参列者に配られることもあり、「饅頭本」と呼ばれることもあります。また、愛知県春日井市にある文化フォーラム春日井には、日本自分史センターがあり、約8000タイトルの自分史を自由に閲覧できます。

主な自分史の例

舩山信一 『ひとすじの道―唯物論哲学者の自分史』
永六輔 『上を向いて歌おう 昭和歌謡の自分史』

まとめ

自分史は、個人の人生を記録するだけでなく、社会の歴史や文化を映し出す鏡でもあります。自己表現や終活の一環として、自分史を書いてみてはいかがでしょうか。

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