自分症候群

アルバム『自分症候群』の概要

『自分症候群』（じぶんしょうこうぐん）は、日本の著名シンガーソングライター、さだまさしが1985年12月21日にリリースしたソロ11枚目のオリジナル・アルバムです。本作は音楽だけでなく、同名の短編小説およびエッセイ集も同時期に発表され、幅広い表現形式が特徴的です。

アルバムの特徴

本アルバムのライナーノートは前作『ADVANTAGE』と同様、単なる収録曲の紹介にとどまらず、ほとんどがさだによる短編小説で構成されています。また、「上海小夜曲」「長崎BREEZE」「夢一匁」はエッセイとしても位置づけられており、音楽と文学の融合を楽しむことができます。後のCD版には最初の盤にのみ収録されていた「もーひとつの恋愛症候群」がボーナストラックとして追加されており、より一層の魅力を与えています。

収録曲の解説

アルバムには多様なテーマを持つ楽曲が収められています。以下ではいくつかの代表曲を詳しく見ていきましょう。

1. 風が伝えた愛の唄

失った大切な夢や愛を子守歌として表現したこの曲は、失ったものがあっても生き続けることで再び出会う可能性があることを示唆します。聴く人々に希望を与えるメッセージが込められています。

2. サイボーグ・サイボーグ -アルミニウム製の子供たち-

現代社会における若者の人生についての皮肉を含んだ楽曲で、「マニュアル通りにしか生きられない人々」をサイボーグのようにたとえています。この曲は、さだ自身のコンサートでも語られているテーマです。

3. 沈吟（ピアニッシモ）

この曲では、音楽記号「ピアニッシモ」が象徴する心の弱さを表現し、女性の内面的な葛藤を描写しています。感情の表現が豊かで、聴き手に深い共感をもたらします。

4. 8つ目の青春

先輩の失恋を経た恋の成功を後輩の視点から歌ったこの曲は、恋愛の機微や若者の成長を描いています。

5. Bye Bye Blue Bird

自分の幸せを犠牲にした女性の心情を描いたこの曲は、愛の深さと無償の愛を掘り下げています。

6. Final Count Down

父親が娘をシンデレラにたとえて見守る様子を、ロックンロールのリズムで軽快に表現した楽曲です。イントロとエンディングには小林克也のカウントダウンが用いられ、印象的です。

7. ねこ背のたぬき

ラップ調の歌詞が特徴的なこの曲では、シンセサイザーが多用されており、ユーモア溢れる内容に仕上がっています。さだの特別な演奏も披露されたことがあります。

8. 上海小夜曲

別れた女性のことを思い出す男性の感情を描写した静かな曲。上海の黄昏が背景に浮かび上がります。

9. 長崎BREEZE

故郷である長崎を舞台にしたこの曲では、恋に伴う喜びと悲しみが交錯する様子が詩的に表現されています。

10. 草枕

人生の困難に挑む姿を描いた楽曲で、夢を実現するために歩み続ける強い意志が表明されています。

11. 夢一匁

小さな夢の大切さを歌い上げるこの曲は、夢そのものが持つ意味を改めて考えさせるメッセージを届けています。

12. もーひとつの恋愛症候群

前作の替え歌として作られたこの楽曲は、ライブ録音が収録されているボーナストラックで、特別感を醸し出しています。

エッセイ集

アルバムと同名の短編小説集は1985年に新潮文庫から発行され、さだまさしのライナーノート集の第4弾となります。アルバム『ADVANTAGE』と本作『自分症候群』のライナーノートを基にしており、これまでの作品とは異なるアプローチがされています。

各短編とエッセイは、視覚的にも区別できるように異なる用紙が用いられており、見た目にも楽しめる工夫がされています。これらの作品は後にラジオドラマとしても放送される中で、さだの作品世界がさらに広がることとなりました。

アルバム『自分症候群』は、音楽と文学が融合した独特の作品であり、多くのファンを魅了し続けています。

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