花と奥たん

『花と奥たん』は、高橋しんが手掛けた漫画作品で、『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて2008年から2019年まで連載されました。高橋氏にとって『最終兵器彼女』以来の『スピリッツ』への復帰作であり、後に『月刊!スピリッツ』でも連載されています。

物語の舞台は、東京の中心部に突如として巨大な花が出現し、都市機能が壊滅した世界です。この花の影響で地殻変動が起こり、東京は封鎖状態に。しかし、本作の軸となるのは、主人公である主婦「モモ（奥たん）」が、美味しい料理を作るまでの日常風景です。巨大な花を巡る謎や世界の状況は断片的に語られるのみで、終末的な世界観でありながら、どこか温かみのある雰囲気が特徴です。

物語は、巨大な花が出現してから1年後、横浜市のはずれにある「うるわしが丘」という街で展開されます。主人公のモモは、愛兎のPたんと共に、封鎖された区域で不足しがちな食材を求めて、日々小さな冒険を繰り広げています。夫の正太郎（旦那たん）は、巨大な花が出現した際に東京にいたまま消息不明となっていますが、モモは彼の帰りを信じて、毎日美味しい晩ご飯を作り続けています。

主な登場人物

モモ / 奥たん: 本作の主人公で、うるわしが丘に住む25歳の新婚主婦。夫の正太郎が東京から帰宅する日を心待ちにしながら、毎日手の込んだ料理を作っています。北海道出身で、のんびりとした性格ながらも、積極的な一面も持ち合わせています。
正太郎 / 旦那たん: モモの夫で、東京に勤務中に巨大な花の災害に巻き込まれ消息不明に。回想シーンにのみ登場し、モモに対して常に敬語で話す優しい男性です。
Pたん: モモのペットのミニウサギ。高い知能を持ち、作中ではモノローグを担当しています。モモの作る料理のレシピを紹介するコーナーも担当しますが、内容はかなりいい加減です。
農家のエロオヤジ: 農業を40年続けているベテラン農家。モモの胸を揉む代わりに卵を分けてくれます。巨大な花の災害で娘が行方不明になっており、諦めている様子です。
残され主婦: 東京壊滅後も、新政府の避難勧告に従わず、うるわしが丘に残った主婦たち。夫が行方不明の主婦が多く、男手が不足している状況です。

設定

巨大な花: 1年前に東京の中心部に出現した謎の花。出現後、周囲の植物が異常な成長を遂げ、東京の中心部はジャングル化（東京森）しています。この影響で東京は首都機能を失い、首都は別の都市に移転しました。2度目に花が咲いた時、世界が終わるという噂も流れています。
東京森: 巨大な花の影響で植物が異常成長した東京の中心部。ジャングル化して以降、生還者は確認されていません。付近の植物は毒性があるという噂もありますが、モモのように異常成長した野菜を食べていても体調を崩さない人もいるため、真相は不明です。
封鎖区域: 東京森周辺は封鎖されていますが、抜け道も存在します。また、巨大化したバッタが発生するなど、農業にも被害が出ています。

この作品は、終末的な世界観でありながらも、主人公の日常を丁寧に描くことで、読者に温かさや安らぎを与えてくれます。また、巨大な花や世界の謎が少しずつ明かされていくことで、物語への興味を掻き立てます。料理の描写も魅力的で、Pたんによるレシピ紹介コーナーも、本作の魅力の一つです。

書誌情報

高橋しん 『花と奥たん』 小学館〈ビッグスピリッツコミックススペシャル〉、全5巻
2009年5月5日発行、ISBN 978-4-09-182533-9
2013年4月3日発行、ISBN 978-4-09-184843-7
2019年8月4日発行、ISBN 978-4-09-860429-6
2019年9月4日発行、ISBN 978-4-09-860440-1
* 2019年10月5日発行、ISBN 978-4-09-860478-4

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