花の折鶴笠

橋幸夫のシングル「花の折鶴笠」：映画との関わりと音楽的背景

1962年12月5日、橋幸夫の29枚目のシングルレコード「花の折鶴笠」(VS-871)が発売されました。この楽曲は、橋幸夫と大川橋蔵が共演した同名映画の主題歌として制作されたものです。本記事では、この楽曲の制作背景、音楽性、そして映画との関わりについて詳細に解説します。

映画との関わりと制作の舞台裏

橋幸夫は当時、大映と3年間の準専属契約を結んでいましたが、「花の折鶴笠」は東映の作品でした。前年（1961年）には東映作品「わが生涯は火の如く」で同名の主題歌を歌っており、今回、再び東映作品で主題歌を担当することとなりました。橋幸夫自身は、大映との契約が残っていたにもかかわらず、映画会社間の事情によるものだったのではないかと回想しています。

雑誌「近代映画」の記事によれば、関係者の証言として、橋幸夫の恩師である佐伯孝夫の家族が東映に勤務しており、その縁から東映側が橋幸夫への出演依頼を行ったとされています。東映側からの依頼内容は、「大映での映画出演を11本こなしたので、将来のためにも他社の作品に出演し、手始めとしてこの映画で主題歌を歌ってもらいたい」というものでした。この申し出によって、待望の「両橋」共演が実現することとなったのです。

作詞は佐伯孝夫、作曲は吉田正と、橋幸夫の恩師コンビが担当しました。映画と並行して制作されたこの楽曲は、映画公開4日後の12月5日に発売されました。

音楽性とヒット曲との比較

「花の折鶴笠」が発売された時期は、橋幸夫の代表曲の一つである「いつでも夢を」が9月に発表され大ヒットしていた時期と重なります。「いつでも夢を」はレコード大賞を受賞するなど大きな成功を収めましたが、その影に隠れてしまった印象も否めないとしています。「潮来笠」など橋幸夫の時代劇歌謡で共演した静子は、本作には参加していません。

カップリング曲の「風流数え歌」もまた、佐伯孝夫作詞、吉田正作曲編曲の作品であり、映画の主題歌として使用されています。

楽曲情報と収録アルバム

花の折鶴笠
作詞：佐伯孝夫
作・編曲：吉田正

風流数え歌
作詞：佐伯孝夫
作・編曲：吉田正

共演：豊寿（三味線）、豊藤（三味線）

収録アルバム：
『唄う橋幸夫 颯爽股旅篇』（1964年1月発売）
『橋幸夫 全曲集』（1999年10月、VICL-60474）
『橋幸夫大全集』（1993年9月、Disc2）
『橋幸夫のすべて』（2011年2月、Disc1）
* 『吉田正大全集』（1997年9月、Disc5）

映画「花の折鶴笠」について

主題歌となった映画「花の折鶴笠」（東映京都）は、大川橋蔵と橋幸夫の共演により制作され、1962年12月1日に公開されました。橋幸夫にとって、本作が東映時代劇への唯一の出演作品となりました。

「花の折鶴笠」は、長谷川一夫が過去3回映画化している作品で、大川橋蔵は舞台版で演じていました。映画版には橋幸夫が加わり、より華やかな作品となりました。物語は、気ままな旅を続ける風来坊の半太郎（大川橋蔵）と、やくざ志願の若者・朝吉（橋幸夫）、悪人に狙われる富豪の娘、鉄火な女道中師、そして貪欲な親分などが絡み合い、騒動を巻き起こす展開となっています。半太郎と朝吉は大暴れします。

まとめ

「花の折鶴笠」は、橋幸夫のキャリアにおける重要な作品の一つであり、映画との深い関わり、そして音楽的背景を理解することで、その魅力をより深く味わうことができるでしょう。 楽曲そのものだけでなく、当時の音楽シーンや映画界の状況を知る上で貴重な資料となっています。

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