角田軌道

角田軌道の歴史とその背景

角田軌道（かくだきどう）は、宮城県南部の槻木駅を起点にし、阿武隈川の西岸沿いに位置する村々を結んでいた鉄道の一つです。この鉄道は、1899年に「角田馬車鉄道」として設立され、蒸気機関車が導入された後、「角田軌道」と改名されました。鉄道の開業当初は馬車鉄道としてスタートしましたが、経営状況の変化によりその運営が難しくなり、1929年に営業を停止しました。

鉄道設立の経緯

1897年、丸森の斎藤信太郎は沿線有力者とともに馬車鉄道の設立を計画しました。同年5月には宮城県から特許を取得し、10月には角田馬車鉄道として法人設立が完了しました。当初の計画では、日本鉄道の槻木駅から白幡橋を経ていくつかの集落を通る約19キロメートルの区間が決定されていました。1898年には工事が始まりましたが、白幡橋の拡幅問題や地権者との交渉の難航により、工事は遅れ気味となりました。

1899年8月にようやく槻木から角田までの区間が開通し、好調な乗客数を記録しました。しかし、1903年には不況の影響が及び、乗客数と貨物輸送量が大幅に減少しました。こうした厳しい状況から、さらに社長が交代するなど、経営陣も変化を重ねました。

蒸気化および運営の変更

1916年には社名を角田軌道に変更し、動力を馬車から蒸気機関車へと切り替えました。これにより槻木-角田間の所要時間が約80分から40分に大幅に短縮されることになりました。ただし、角田から舘矢間は依然として馬車による運行が続けられました。やがて蒸気機関化はもたらした新たな問題として、資金や材料費の高騰から更なる経営悪化を招く結果となりました。

1918年には舘矢間間が廃止され、最終的には自動車への移行が進められました。1924年には列車運転が一時休止となり、1929年には営業を完全に停止する事態に至りました。角田軌道の資料は少なく、その存在を知ることは困難です。

幻の角田電気鉄道計画

角田軌道の経営が厳しい時期、沿線の自治体は新たな電気鉄道の計画を立てていました。これは大河原駅を起点として角田、丸山、金山町に至る大規模な計画で、1926年に免許も下付されました。しかし、多くの経済的困難に直面し、この計画も実現には至りませんでした。

まとめ

角田軌道はその短い歴史の中で、多くの試行錯誤や時代の変遷を体験しましたが、最終的には経営の悪化により1929年に営業を終了しました。他の多くの鉄道がバス会社へと転業した中、角田軌道は後継企業のないまま解散してしまい、その痕跡は薄れています。日本の鉄道の歴史の中で、角田軌道は独特の存在感を持つ一つの事例として残っています。

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