貫通扉

貫通扉（かんつうとびら）

貫通扉は、鉄道車両同士の連結部分に作られた通路を隔てる扉のことを指します。これにより、車両間の移動が可能となり、乗客は安全に行き来することができます。貫通扉が設置される位置は車両の妻面であることが多く、特に先頭車両にも設置されることで、緊急時の脱出経路としての役割も果たしています。

貫通扉の役割と設置

通常、列車は連結された複数の車両で構成されますが、その車両間を行き来できる通路が「貫通路」となります。貫通扉は、この貫通路を仕切り、音の進入や風の吹き抜けを防ぐ目的で使用されています。この扉は基本的に車両の中央ライン上に設置されますが、稀に取り付け位置がずれる場合もあります。

貫通扉は、固定された編成の中間部分ではコスト削減や視界の確保のために省略されがちですが、古い形式の車両ではデザインとしての特徴があるものもあります。例えば、キノコ型の貫通路や幅広の扉など、バリエーションが存在します。また、近年では美観や安全性向上のために、先頭部の貫通幌を撤去する傾向が増えています。

日本における貫通扉の歴史

日本の鉄道において、貫通扉は明治時代からの歴史があります。当初は貫通路を持たない車両が多かったものの、1898年に発生した強盗事件を受けて安全性の必要性が認識され、以降ボギー客車に貫通路及び貫通扉が整備されるようになりました。1951年に起きた桜木町事故が引き金となり、貫通扉の設置がほとんどの車両に普及しました。

今では日本の鉄道車両において、貫通扉はほぼ標準装備となっており、非常時には脱出ルートとして重要な役割を果たしています。特に近年では、火災時の延焼防止策として、貫通扉の設置が義務付けられるなど、より安全対策が講じられています。

日本国外の貫通扉

国外の鉄道システムにおいては、貫通扉について状況が異なります。多くの地域では、開放状態の貫通路が主流であったり、非常用としてしか設置されていないことも少なくありません。専門的ではないケースも見受けられますが、21世紀に入ってからは、常に利用できる貫通路を持つ車輌が増加しています。

例えば、ドイツのベルリン地下鉄は1995年から常時通行可能な貫通路を取り入れ始め、スウェーデンのストックホルム地下鉄も1997年から同様の変更を行いました。アメリカのアムトラックでも、乗客の避難手順が明示された避難マニュアルを用いて貫通扉の利用を促しています。

地下鉄車両の非常扉

日本の地下鉄車両では、非常用に貫通扉の設置が求められています。この場合の貫通扉は、車両間の移動を前提としないため、取り付け位置や形状が工夫されることもあります。通常、非常扉は車両の末端部に設置されており、緊急時には逃げ道として利用されます。

全体として、貫通扉は鉄道の安全性や利便性を向上させる重要な要素です。日本国内外の鉄道におけるその存在意義は、乗客の希望に応える形で進化してきたことを示しています。

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