幌

幌（ほろ）とは

幌（ほろ、英: tarpaulin / tarp）は、主に風雨や砂塵から保護するために、車両や構造物を覆う防水性の布です。トラック、オープンカー、鉄道車両、乳母車、馬車など、様々な場所で使用され、用途に応じて多様な形状、素材、機能を持っています。

自動車における幌

トラック

トラックの荷台に取り付けられ、積荷を風雨や直射日光から守ります。金属製の骨組み（幌骨）に帆布（綿やポリエステル製）を被せて使用します。一般的なのは後方のみ開閉できるタイプですが、側面が開閉可能なものや、アコーディオン式に折りたためるものもあります。

黎明期のトラックの標準的な構造でしたが、紫外線による劣化や飛散物による雨漏りが課題でした。近年では耐久性の高いアルミ合金製の荷箱やウィングボディが普及し、幌の使用は減少傾向にあります。

乗用車

乗用車における幌は、キャビン全体を覆う「ソフトトップ」、サッシやドアを備え屋根の大部分が幌である「キャンバストップ」、後部座席のみを覆う「ランドーレット」などがあります。風雨を避けたり、開放感を得たりするために、開閉や着脱が可能です。開閉は手動式の他、電動式もあります。

建築における幌

建築分野では、膜構造として利用されます。簡易なものでは、鋼製フレームに幌をかけた店舗の庇などがあり、大規模なものでは、野球場の屋根を覆うものがあります。

鉄道における幌

鉄道車両においては、車両間を連結するために使用され、主に以下の2種類があります。

外幌

車両の外側に設置される幌で、列車編成全体の空気抵抗を減らし、騒音を抑制する役割があります。また、プラットホームからの転落を防止する目的で設置されるものもあり、これは「転落防止幌（ガードスクリーン）」とも呼ばれます。

貫通幌

車両間の通路を構成する蛇腹状の覆いで、乗客が車両間を安全に移動できるように設置されています。ターポリン製が一般的です。

両側に貫通幌があるものを「両幌」、片側のみにあるものを「片幌」と呼びます。取り外し可能な幌もあり、運用上の理由から常時外されている場合もあります。多層建て列車では、併合時に幌同士が干渉しないように、分割時にどちらの車両に幌を残すかといった「運用」が存在することもあります。

両幌は、金属製の枠を車体側の枠と連結して使用します。上部には折りたたみ時にずれないようにフックが付いていることが多く、車体への固定には回転式の閂が用いられます。

編成の先頭車両では、貫通扉の周囲を凹ませて幌を収納し、外観をスマートに見せる工夫が凝らされている場合もあります。

貫通幌は、清掃などのメンテナンスに手間がかかり、重量があるため作業性が悪いという難点があります。この問題を解決するために、自動貫通幌引出装置や、あらかじめ幌アダプターが搭載された車両も存在します。

外国の貫通幌

ヨーロッパでは、車体正面にゴム製の円い幌を取り付ける方式が一般的です。元々はアメリカ発祥で、防水素材の幌をばねの力で圧着させていました。イギリスやアメリカでは、センターバッファ（緩衝器）付きの巨大な幌が使用されています。

日本では、国鉄線で自動連結器交換前に類似のものが客車で使用されていましたが、交換後は吊り幌に置き換えられました。私鉄では、新京阪鉄道（現阪急京都線）のP-6形に採用されたのが唯一の例でしたが、メンテナンスの手間や視界不良などの理由から、1960年代に撤去されました。

つり幌

貫通幌の一種で、幌をばね装置で吊り下げる構造をしています。しかし、ばね装置が視界を妨げたり、保守や連結作業に手間がかかるため、近年ではほとんど採用されていません。

その他

北海道には「幌」の字が付く地名（札幌、幌延など）が多くありますが、これらはアイヌ語の「poro」（大きい）に漢字を当てたもので、幌そのものとは関係ありません。

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