赤備え

赤備えについて

赤備え（あかぞなえ）は、戦国時代から江戸時代にかけて存在した日本の特異な軍団編成の一形態です。この編成は、構成員が赤や朱といった色彩を基にした甲冑や旗指物を装備することによって特徴づけられています。戦国時代には黒色や黄色などの色で統一された軍団もありましたが、赤色は特に高価な辰砂を用いて作られており、戦場でも目を惹く存在でした。そのため、赤備えは通常、優れた武勇を持つ武将が指揮する精鋭部隊として知られ、後世にはその武勇の象徴として語り継がれています。

武田の赤備え

赤備えの起源は、甲斐の武田氏に帰せられるとされ、最初にこの編成を率いたのは飯富虎昌です。彼は武田信玄の軍の中核となる騎馬部隊を編成し、自らの活躍をもって地位を築きました。赤色の甲冑は、名のある武士が自らの武勇を誇示するための装飾品として位置づけられていました。1565年、虎昌が切腹すると、その部隊は彼の弟山県昌景に引き継がれ、赤備えの伝統は引き継がれました。

当時の武田軍では、赤備えが総勢千騎に達し、他の武将たちと共に活躍しました。1572年と1574年の武田家の文書には、赤備えに関する装備の規定が記されており、信玄が特別に朱色の統一を認めたことも分かります。このため、「赤備え=精鋭」のイメージが広まり、他の大名にも影響を与えました。真田幸村などの有名な武将もこの赤備えを採用するほどです。

真田の赤備え

真田信繁、後の幸村が具現化した赤備えは、1615年の大坂夏の陣において多いに注目されました。彼は徳川家康に対抗して、武田由来の赤備えを率いて天王寺口の戦いに臨みました。その際、彼の部隊は見事に家康の本陣を攻撃し、以降も武名を高める結果となりました。この戦いは、真田家の名声を更に確立するものであり、絵画でも描かれるなど特に注目を集めました。

既に文禄の時代から真田家は赤い甲冑を使用しており、信繁はこの伝統を受け継いで発展させたのです。

井伊の赤備え

武田氏の滅亡後、井伊直政は武田の旧臣たちを配属し、自身の隊も赤備えとして編成しました。直政の部隊は「井伊の赤鬼」と称され、特に戦での奮戦が知られています。戦国時代の名残として、彼の軍装は、幕末に至るまで赤備えの基本を築きました。大坂の陣では、家康がその煌びやかな軍装を見て、昔の赤備えを懐かしむ一面もあったと言われています。

その他の赤備え

武田に限らず、他の大名の中にも赤備えが存在しました。後北条氏では、色ごとの部隊があったり、福島正則が自らの精鋭部隊に赤塗りの甲冑を用いるなど、多様性が見られます。江戸幕府の小十人組も朱色の甲冑を使用しており、これらは武田の赤備えを模範にしているとされています。

海外の軍隊でも、赤色が戦術的に用いられた事例があり、赤備えの影響は国境を越えて広がっていたことが分かります。

結論

赤備えは、戦国時代から江戸時代にかけての日本の戦闘文化に深く根ざした象徴的存在であり、歴史的な地位を持つ精鋭部隊の代表格でした。色の統一によって士気を高め、また武士としての誇りを表現する手段ともなっていたのです。

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