小十人

小十人（こじゅうにん）について

小十人は、江戸幕府における重要な職制の一つであり、その役割は徳川将軍家や藩主の警護を担当することにありました。江戸幕府の軍事関連の職制である五番方の一部に位置づけられ、基本的には歩兵の役割を持ちながらも、高い格式を有する存在でした。彼らの名前の起源は「扈従人」に由来するとされ、時代を経て小十人という名称に変化しました。

役割と組織

小十人はその名の通り、主に十人ほどの小グループで構成されていましたが、実際には両番（書院番や小姓組）よりも格下の位置づけにされていました。しかし、その配置が江戸幕府の重要な警護部隊であったため、格式や存在感は決して低くありませんでした。彼らは将軍本陣の近侍として、戦時だけでなく平時でも常に将軍の近くにいることが求められ、その役割は戦闘における先遣部隊や警備隊としても幅広く活動するものでした。

格式と階級

小十人は一般的に700石から1,000石以上の家禄を有する旗本から選ばれました。その中で小十人頭（トップ）や小十人組頭といった管理職も存在し、もちろんこれらの役職には馬上資格が与えられていました。これに対し、一般の小十人番衆は馬上資格を持たず、しかも主に家禄100俵級から任命されることが多いという、独自の地位を持っていました。江戸城への登城時には徒歩で専門の装束を着用し、槍使いや従者を含む体制で出勤するのが通例でした。

警護活動

平時には将軍行列の前衛部隊や、目的地への先遣隊として行動し、重要な警備任務に従事していました。泰平の時代においては将軍が日光東照宮や増上寺といった神社仏閣に参拝する際の働きが特に重要視され、将軍の外出時には小十人がその主役として前線を支えることになりました。江戸時代初期や幕末の歴史の中で、彼らは将軍と共に京や大坂への警護任務にも携わっており、その姿は多くの人々に親しまれました。

軍装と装具

小十人はいわゆる「海老殻具足」と呼ばれる朱色の甲冑を用いていました。これらの装飾具は個人の所有ではなく、在職中に幕府から貸与され、退任時には返却することが求められていました。これにより、小十人たちは一様に整った姿を保ち、幕府の威信を体現する役目を果たしました。彼らの装束は非常に特徴的で、朱色に塗られ金輪貫の前立物がついた兜などが含まれていましたが、馬上資格がないため袖部や脛当は簡素なものでした。

結論

小十人は、江戸時代において将軍近侍として重要な役割を担った部隊であり、格式と任務において独自の地位を築いていました。歩兵としての特徴を持ちながらも、その賜る職責はすなわち将軍や大名の安全を守る重要な責任でもありました。歴史を学ぶ上で忘れてはならない、そんな存在であると言えるでしょう。

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