農学科

農学科とは

農学科（のうがっか）は、日本の大学、短期大学、専門学校において、農学分野の教育・研究を行う学科の一つです。伝統的に、植物の生理、病害、害虫、土壌、肥料といった農業生産の根幹に関わる基礎科学や、作物の栽培技術、品種改良など応用的な技術開発について深く探究する分野を扱ってきました。

歴史と現状

かつて、多くの大学の農学部において中心的な学科として位置づけられていた農学科ですが、時代の変化や学問領域の専門分化、社会からの要請の多様化に伴い、近年ではその名称を変更したり、他の学科と統合して再編されたりするケースが多く見られます。「食料科学科」、「生物資源学科」、「生命環境学科」、「応用生物科学科」など、学科名に学びの特色をより反映させる形での改組が進んでいます。例えば、岩手大学農学部はかつて農学生命科学科がありましたが、現在は植物生命科学科や応用生物科学科などに変更され、2025年には食料農学科を新設予定です。山形大学農学部や香川大学農学部、佐賀大学農学部なども、従来の農学科の内容を包含しつつ、食料生命環境学科や応用生物科学科、生物資源科学科といった名称の1学科コース制に移行しています。公立短期大学に設置されていた農学科も、多くは4年制大学への昇格に伴って異なる学科名に改組されました。

一方で、現在でも「農学科」という名称を維持している大学も複数存在します。例えば、東京農業大学農学部には農学科が設置されており、農業生産科学コースや園芸生産科学コースが用意されています。その他、明治大学農学部、東海大学農学部、新潟大学農学部、宮崎大学農学部、鹿児島大学農学部なども農学科を有し、コース制を導入している大学が多くあります。

専門学校では、各都道府県が設置する農業大学校において、農学科の名称が用いられているケースが見られます。

学びの内容

農学科では、植物科学、土壌学、肥料学、病理学、昆虫学、育種学、栽培学など、農業生産に必要な広範な知識と技術を習得します。これらの基礎科学に加え、バイオテクノロジーの農業への応用、環境保全型農業、スマート農業など、現代の農業が抱える課題解決に向けた応用的な学びも含まれるのが一般的です。実習や実験、フィールドワークを通じて、理論だけでなく実践的な能力を養うことに重点が置かれています。

名称が変更された学科であっても、弘前大学の園芸農学科、茨城大学の地域総合農学科、京都府立大学や信州大学の農学生命科学科、日本大学の生命農学科、岡山大学の総合農業科学科など、従来の農学科の学びの範疇を含む、あるいは発展させた内容を提供している学科は多数存在します。

卒業後の進路と関連資格

農学科やそれに類する学科を卒業した学生は、農業生産に直接携わる道だけでなく、種苗会社、肥料・農薬メーカー、食品関連企業、農業機械メーカーなど、農業に関連する様々な産業分野で活躍しています。また、研究機関での研究職、農業改良普及員などの公務員、教育者といった進路もあります。農業法人や地域と連携した新しいビジネスを起こすなど、起業の道を選択する卒業生もいます。

特定の技術資格取得への道も開かれています。特に、造園施工管理技士という専門資格の受験資格において、農学科（一部例外あり）や特定の類似名称学科の卒業生は、所定の実務経験を経て資格取得を目指すことが可能です。例えば、香川大学の農業生産学科、弘前大学旧農学部の農業生産科学科、高知大学の暖地農学科、岡山大学の総合農業科学科（生物資源開発学コースを除く）などが、過去にこの資格の対象学科として認められていました。

関連する分野

農学科の学びは、食料生産科学科、食農科学科、食品科学科といった食品関連分野、森林科学科、造園学科、農業工学科といった林業や土木、環境分野、さらには農芸化学、農業経済学、応用生物科学、バイオサイエンスなど、幅広い学問領域と関連しています。これらの関連分野との連携や、学際的なアプローチによって、現代農学は多様な発展を遂げています。

もう一度検索