遙かなる星

遙かなる星

『遙かなる星』は、佐藤大輔が著し、鶴田謙二がイラストを手掛けた日本の小説シリーズです。1995年から徳間書店（トクマ・ノベルズ）より刊行されました。本作は、冷戦下のキューバ危機を発端とする第三次世界大戦後の世界を舞台に、日本の宇宙開発を描く架空戦記です。

ストーリー

第1巻：パックス・アメリカーナ

1962年、ジョン・F・ケネディ大統領率いるアメリカは、カリブ海に浮かぶ共産主義国家キューバへのソ連による核ミサイル配備という危機に直面します。アメリカはパックス・アメリカーナ維持のため、キューバへの直接侵攻を決断。しかし、これが第三次世界大戦の引き金となり、世界は地獄と化します。

第2巻：この悪しき世界

核戦争によりアメリカは崩壊、ソ連も大きな痛手を負います。日本は奇跡的に大きな被害を免れますが、資本主義諸国の盟主として担ぎ上げられ、生き残るためにあらゆる製品を輸出しなければならなくなります。また、来るべき第四次世界大戦から逃れるため、宇宙開発に狂奔します。

第3巻：我等の星 彼らの空

1986年、日本は宇宙開発を推し進め、ついに宇宙基地JSP-03の建設を開始します。しかし1991年、東西に分裂したアメリカの武装勢力「東軍」がJSP-03を襲撃、事態は急展開を迎えます。

主要登場人物

日本

北崎望: 北崎重工の創業者。妻との約束のため、ロケット開発に尽力します。
黒木正一: 航空宇宙技術者。宇宙への憧れからロケット開発に情熱を注ぎます。
原田克也: 元自衛官。北崎重工の幹部として宇宙開発を指導します。
原田和己: 原田克也の息子。JSP-03建設の責任者となります。
屋代幸男: 宇宙開発を外から見守るマニア。ある事件をきっかけに開発に関わることになります。
屋代昌幸: 屋代幸男の息子。宇宙飛行士として活躍します。
ベム: 宇宙飛行士。屋代昌幸の同僚。
榊原: 沖縄宇宙港の管制官。冷静な判断力で宇宙飛行士を支えます。
クルト・タンク: ドイツ人航空技術者。北崎重工の顧問として航空機開発に携わります。
論説委員: 「会合」のメンバー。マスコミ関係者として日本の戦略に関わります。
児玉: 陸上自衛隊の二佐。宇宙服実験施設の設立に尽力します。
穂積綾乃: 北崎重工の社員。硬式宇宙服のテストを担当します。
榊原琴音: 榊原の娘。北崎重工でアルバイトをしています。
島村和人: 中学生。作文コンクールで金賞を受賞し、沖縄に招待されます。

ソヴィエト連邦

ユーリ・ガガーリン: ソ連の宇宙飛行士。史実とは異なり、生存し、宇宙開発を指揮します。
セルゲイ・コロリョフ: ソ連の宇宙機主任設計官。有人月面探査計画を推進します。
ゴルバチョフ: ソ連の大統領。改革を試みますが、ソ連は破綻へと向かいます。

アメリカ合衆国

ジョン・F・ケネディ: アメリカ大統領。キューバ侵攻を決定し、第三次世界大戦を招きます。
アラン・モーガンステイン: 東軍の少佐。JSP-03に対するテロを計画します。

国家

日本: 第三次世界大戦を奇跡的に乗り越え、資本主義諸国の盟主として宇宙開発を推進します。
ソヴィエト連邦: 超大国としての地位を維持しますが、経済は破綻へと向かいます。
アメリカ合衆国: 第三次世界大戦で崩壊し、東西に分裂します。

その他の国々

キューバ、中華人民共和国、ドイツ、フランス、イギリス、オーストラリア、インド、ブラジル、タイ、カナダ、ヴェトナム、中東諸国、メキシコ、パナマ、フィリピンなど、様々な国々が第三次世界大戦後の世界でそれぞれの道を歩んでいます。

組織

北崎重工: 航空宇宙関連技術を独占する大企業。宇宙開発を牽引します。
宇宙開発事業団: 日本の宇宙開発を推進する特殊法人。
会合: 日本政府が設立した秘密組織。日本の生存戦略を研究します。
JUNPFORCE: 自衛隊の北米派遣部隊。内戦の停戦維持や難民保護を目的とします。

登場兵器・メカニック

F104, 北崎F-9D, 三菱 F-13などの航空機や、TMA-0などのロケットが登場します。XB-70ヴァルキリーは超音速飛行特性研究機として運用されます。

北崎重工総合技術博物館（沖縄） 展示品

中島十八試陸上攻撃機 連山、実験用小型往還機母機、B-52、XB-70ヴァルキリーなどが展示されています。

第4巻の構想

佐藤大輔は第4巻の執筆を予定していましたが、2017年に死去したため、未完となりました。

『遙かなる星』は、核戦争後の世界で宇宙開発に挑む日本の姿を描き、未来への希望と人類の可能性を追求する作品です。

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