遭遇戦

遭遇戦

遭遇戦（そうぐうせん、英: meeting engagement, encounter battle）とは、徒歩または車両によって前進や移動を行っている自軍の戦闘部隊が、同様に移動中の敵部隊と予期せず、あるいは予期しつつも接触し、その場で突発的に発生する戦闘状況を指します。行軍や機動の最中に敵と遭遇するため、計画的な攻撃や防御戦闘とは異なり、状況が極めて流動的かつ不確定な中で戦闘が開始されるのが特徴です。

戦術的な位置づけと原則

遭遇戦は、一般的に攻撃部隊が積極的に前進する過程で発生するため、攻撃行動の一環として捉えられています。しかし、両軍が運動中に接触することから、戦闘の推移は予測が難しく、刻一刻と状況が変化します。そのため、敵との接触後にいかに迅速かつ適切に初動を展開できるかが、その後の戦闘の帰趨を大きく左右します。

遭遇戦を有利に戦う上で最も重要な原則は、「主導の原則」です。これは、敵と遭遇した際に、たとえそれが全く予想していなかった時期や場所での「不期遭遇戦」であったとしても、敵の状況を正確に把握し、必ずしも上級指揮官からの詳細な命令を待つのではなく、自らの任務と直面する状況を総合的に判断し、各級の指揮官が自律的に迅速な戦闘行動を開始することの重要性を示しています。特に現代における機械化部隊を用いた戦闘では、部隊の機動力が高いため、状況判断の迅速さ、的確な決心、そして作戦指揮の柔軟性がより一層強く求められます。主導権を握り、敵よりも先に有効な戦術行動をとることが、遭遇戦における勝利への鍵となります。

戦力の展開と対応

遭遇戦において、自軍の主力を効果的に戦闘態勢に展開させるための時間的な猶予を確保することが極めて重要です。この時間稼ぎは、戦場の要衝となる地形への応急的な攻撃や、重要な地点の確保、あるいは防御や遅滞行動といった様々な戦闘行動によって達成されます。通常、前衛部隊が敵と最初に接触し、戦闘を開始します。その間に、後続の主力部隊は行軍序列から戦闘に適した陣形へと迅速に移行し、敵の側面や背面といった脆弱な部分への攻撃を企図します。

遭遇戦においては、時間の浪費は許されません。そのため、計画は極めて簡潔で分かりやすく、かつ現場での実施が容易であることが求められます。しかし、自軍が戦力を展開しようとするのと同様に、敵もまた対抗して戦力を展開してくることが十分に考えられます。もし敵が戦意を失い退却に移った場合は、直ちに追撃に移行することで戦果を拡大できます。しかし、もし敵の主力部隊が自軍よりも先に戦闘展開を完了し、強固な態勢を築いてしまった場合は、敵を撃退することに固執するよりも、自軍の損害を最小限に抑えるための行動（例えば防御や離脱）を検討する必要が生じます。

関連する概念

攻撃、機動、行軍、展開
戦闘、戦術、訓令戦術
* 戦いの主導権、奇襲

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