酒場にて

酒場にて

「酒場にて」（さかばにて）は、日本の歌手である江利チエミが1974年9月25日にリリースしたシングル曲です。

ヒットの軌跡

この楽曲は、発売直後にチャートを急上昇するというよりも、じわじわと時間をかけて人気を獲得していきました。オリコンチャートでは最高22位を記録し、翌1975年には年間シングルチャートで67位にランクインするという息の長いヒットとなりました。累計売上枚数は16万8千枚に達し、これは当時の江利チエミにとって、しばらく遠ざかっていたヒットチャートの主要圏への復帰を告げる、久々の大きなヒット曲となりました。

紅白歌合戦への揺るがぬ姿勢

江利チエミは、1969年末に行われた「第20回NHK紅白歌合戦」で出場歌手に選ばれなかった出来事以降、「自分には目立ったヒット曲がない」という理由から、NHK紅白歌合戦への出演依頼を継続して辞退していました。しかし、「酒場にて」が予想を上回るロングヒットとなったことで、NHKは再び江利チエミに熱い視線を送ります。1974年末の「第25回」、そして翌1975年末の「第26回」と、NHKは二年連続で江利チエミに対し、番組へのカムバックを打診しました。

これにより、1968年末の「第19回」以来となる紅白歌合戦への復帰が実現するのではないか、さらにその実績から初の紅組トリを務める可能性もあるのではないかと、ファンの間やメディアで大きな期待が寄せられました。しかし、江利チエミはこれらの再三にわたる打診に対しても「私は既に紅白は卒業した身であり、二度とあの舞台に立つ考えはありません」という強い意志を明確に示し、出演を固く辞退しました。このエピソードは、江利チエミの歌手としての矜持や、紅白歌合戦という国民的番組に対する彼女自身の独自の価値観を物語るものとして、現在でもしばしば語り継がれています。

シングル収録曲

シングルの両楽曲は、作詞を山上路夫、作曲を鈴木邦彦が一貫して手掛けています。

酒場にて
作詞：山上路夫
作曲：鈴木邦彦
編曲：高田弘
演奏時間：3分26秒

陽気なスージー
作詞：山上路夫
作曲：鈴木邦彦
編曲：前田憲男
演奏時間：2分22秒

多数のアーティストによるカバー

「酒場にて」は、そのメロディーと歌詞が多くの人々に響き、世代やジャンルを超えて様々なアーティストによってカバーされています。これは、この楽曲が日本の歌謡史において長く愛され続ける名曲であることを証明しています。主なカバーアーティストを以下に列挙します。

石川さゆり
内藤やす子
テレサ・テン
ニック・ニューサ
天童よしみ
伍代夏子
徳永英明
吉幾三
椎名佐千子
坂本冬美
藤田恵美
市川由紀乃
ハン・ジナ
山本あき
チョン・テフ
丘みどり
三代沙也可
氷川きよし
* フランク永井

これらの多岐にわたるカバーバージョンが存在することで、「酒場にて」はそれぞれの歌手の個性を通じて新たな解釈で歌われ、発表当時を知らない世代にもその魅力が伝えられ続けています。

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