重装機兵ヴァルケン

『重装機兵ヴァルケン』（英題：ASSAULT SUITS VALKEN）は、メサイヤより発売された横スクロール形式のアクションシューティングゲームです。本作は、当時の人気ジャンルであった「リアルロボットアニメ」からの強い影響を受け、量産型有人操縦ロボットである「重装機兵（アサルトスーツ、AS）」を主役据え、一兵士の視点から2101年の太陽系で勃発した大規模な戦争を描いています。汎用兵器として描かれるASは、状況に応じて様々な装備を使い分けることが可能で、これがゲームシステムの中核をなしています。同じ世界観を持つ作品として『重装機兵レイノス』シリーズが存在し、また開発チームが後に手掛けた『FRONT MISSION SERIES GUN HAZARD』とは操作体系などに類似点が見られます。本項では、関連作品であるPlayStation用戦略シミュレーションゲーム『重装機兵ヴァルケン2』についても併せて解説します。

ゲームシステムと特徴

スーパーファミコン向けに1992年 12月18日に発売されたオリジナル版『重装機兵ヴァルケン』（海外名：CYBERNATOR）は、ロボットを操縦する横スクロールアクションゲームです。プレイヤーは主人公ジェイクの搭乗するヴァルケンを操作し、欧州アジア連邦軍と戦います。装備はバルカン砲、パンチ、ミサイル、レーザー、隠し武器のナパームなど複数用意されており、任意に切り替えることが可能です。砲身は上下30度単位で角度調整が可能で、最大12方向への攻撃に対応。ボタンをホールドすることで砲身を固定することもできます。ジャンプ、ダッシュ、防御といった基本的なアクションに加え、肩部に備わった電磁フィールドによる360度防御シールド（空中では不可）や、ジェネレーター余剰出力を用いた強力なパンチなど、ヴァルケンならではのシステムが特徴です。ステージ中に落ちているコンテナを取得することで装備の威力を強化できます。

前作『重装機兵レイノス』が非常に高い難易度と複雑な操作性を持っていたのに対し、本作ではシステムがやや簡素化され、より幅広い層にアピールすることに成功しました。本作の大きな魅力の一つは、そのリアルロボットらしさを追求した細やかな演出です。バルカン砲の排莢が重力の有無で挙動を変えたり、ローラーダッシュやブースト時の土煙、着地時の機体の沈み込みといった自機の挙動。大気圏突入時の機体赤熱化、背景で展開される僚機や敵機の戦闘、敗色濃厚な敵国の急造兵器や生身で立ち向かう歩兵、そして自決する大統領といったドラマチックな描写まで、多岐にわたる演出が作品世界に深みを与えています。また、ステージ中に仲間の通信が画面上に表示され、プレイヤーをサポートしてくれるといった演出も凝っています。

ストーリー

物語は西暦2101年、月面の資源採掘権を巡る環太平洋合衆国と欧州アジア連邦の対立が頂点に達し、第四次世界大戦が勃発したことから始まります。前大戦末期に開発された有人ロボット兵器「アサルト・スーツ」が戦場の主役となり、環太平洋合衆国は新型AS「ASS-117ヴァルケン」を戦線に投入します。プレイヤーは合衆国軍強襲揚陸艦バーシスに所属するヴァルケンパイロット、ジェイク・ブライン中尉となり、宇宙戦力で優位に立つ連邦軍に対し、地上戦を見切り宇宙へと戦力を集中させる反攻作戦に参加します。物語はオペレーション・ソルジャーソウルによる連邦首都攻略まで、全7ステージで構成されています。

本作はマルチエンディングを採用しており、ストーリー中盤のアーク・ノバ地球降下阻止およびシャトル撃墜の成否によって結末が変化します。また、エンディングでは忘れ去られた外宇宙探査艦隊からの通信が描かれ、時系列的に後の物語である『重装機兵レイノス』への繋がりを示唆しています。

登場人物と勢力

物語の中心となるのは、環太平洋合衆国と欧州アジア連邦という二つの勢力です。環太平洋合衆国はアメリカ、日本、オーストラリアなどが中心となった経済共同体から軍事同盟へと性質を強め、欧州アジア連邦は欧州 공동체を前身とする경제 공동体が 전체주의적인 정치체제へ移行した중앙집권体です。

主要な登場人物には、主人公で第68AS小隊「デスワスプ」隊長のジェイク・ブライン中尉がいます。彼は当初、戦う理由を見出せずにいましたが、親友でありライバルでもあったハーマン・シンガー中尉の戦死を機に、「仲間を守る」「戦争を終わらせる」ために戦うことを決意します。他にもジェイクの部下であるカーツ・モートン少尉、バーシスのオペレーターでヒロインのクレア・コーラル曹長、温情厚い艦長チャック・ジョンストン大佐などが登場し、人間ドラマを織りなします。

対する欧州アジア連邦軍には、主人公の宿命のライバルとなる天才的エースパイロット、アルフ・ベルダーク少佐がいます。彼は部下には優しい反面、歪んだエゴを持ち、ジェイクとの戦いを通じて物語を大きく動かします。その他、ベルダークの部下リック・ブリザース少尉や、強硬なアーク・ノバ司令官ゲルツ将軍、そして歴史に翻弄されるシェルマーク大統領などが物語に深みを与えています。

登場兵器

本作には、両勢力の様々な兵器が登場します。

環太平洋合衆国軍: 主役機である汎用ASヴァルケンを始め、その原型となったヒューズ8、次世代機とされるシュペル・ヴァルケンといったASが登場。また、主人公たちが搭乗する頑丈な強襲揚陸艦バーシスも重要な存在です。

欧州アジア連邦軍: 連邦軍の主力汎用ASシュメルツ、宇宙戦用のオラクル、移動砲台型のウンタート、高機動型のデッケン、最終量産型のレベンディックなど、多種多様なASが存在します。特にベルダークが搭乗する最新鋭機ゾアフレムや、物語のクライマックスでジェイクの前に立ちはだかる超大型機動兵器ビルドヴォーグは印象深い存在です。AS以外にも、ホバータンクのフロテールや、ローコストでASに対抗すべく開発されたパワードスーツのハイッシャーなど、様々な種類の兵器が登場し、戦場の多様性を表現しています。

海外版と他機種版

海外では『CYBERNATOR』というタイトルでコナミから発売されましたが、日本版にあった最終ステージでの大統領自決シーンや通信時の顔グラフィックなどが削除・変更されており、後に検閲や編集が加えられたことが指摘されています。一方、2023年にはNintendo Switch向けに『重装機兵ヴァルケン Declassified』が発売されました。これは日本のオリジナル版をベースとし、海外では初となる完全移植が実現しました。加えて、セーブ/ロード機能、映像フィルター、ゲーム音楽プレイヤー、設定資料集、開発者インタビューといった豊富な追加要素が収録され、まさに「機密解除」と呼ぶにふさわしい内容となっています。過去にはPlayStation 2への移植もありましたが、一部演出の簡略化などが批判されました。

重装機兵ヴァルケン2

1999年にPlayStationで発売された『重装機兵ヴァルケン2』は、ジャンルが戦略シミュレーションに変更されました。これは、より重厚なストーリーや複雑なメカニック描写に適しているという判断によるものです。当初は3Dアクションシューティングとして企画されていましたが、開発の難航により大幅に内容が変更されて発売に至りました。キャラクターデザインは衣谷遊、メカニックデザインはスタジオぬえの宮武一貴が担当し、既存のメカにディテールを追加しつつ、新たなオリジナルメカも多数デザインされています。

本作は『重装機兵レイノス』と同じ時代設定で、ヴァルケンでの戦いを前史とした上で『レイノス』の物語を再構成しています。『レイノス』の主人公にはウラガ・タツヤという名前が与えられ、グランパシフィック社のテストパイロットとして登場します。また、『ヴァルケン』シリーズのジェイクやクレア、『レイノス』のリーナといったシリーズの主要人物も登場し、シリーズ間の繋がりが描かれています。

評価と展開

SFC版『重装機兵ヴァルケン』は、発売当時からそのリアルなロボットアクション、会話演出を効果的に挿入したシナリオ、凝った演出、そして盛り上がる音楽などが高く評価されました。特に、ガトリング砲の排莢や重力下の挙動の違いといったディテールへのこだわりは、多くのゲーマーに驚きをもって迎えられました。一方で、難易度は高く、特に終盤は根気が必要とされました。『ヴァルケン2』は、戦略シミュレーションとしての世界観やキャラクター、メカニックデザインは評価されましたが、戦闘シーンのテンポや操作性には課題が指摘されました。

シリーズはゲーム作品だけでなく、書籍（攻略本、設定資料集、ノベライズ、コミカライズ）やカプセルトイ、プラモデルといった立体物としても展開しています。また、対戦型シューティングゲーム『旋光の輪舞2』には、ヴァルケン、ジェイク、クレアがゲスト参戦するなど、他作品とのコラボレーションも行われています。これらの展開は、時代を超えて多くのファンに愛される『重装機兵ヴァルケン』シリーズの根強い人気を示しています。

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