鉄男

映画『鉄男』の詳細

『鉄男』（てつお）は、1989年に公開された塚本晋也監督による独創的な映画で、異質な世界観と衝撃的なストーリー展開が多くの観客を魅了しました。この映画は、サイコロジカルホラーとSFが融合した奇妙な作品であり、登場人物たちの心理的葛藤が繊細に描かれています。

あらすじ

物語は二人の男の人生が交錯する形で展開されます。一人は"男"と呼ばれ、平凡なサラリーマンで、ある日突然、自身の身体から金属片が顔を覗かせることに気づきます。彼の日常は一変し、徐々に自分の身体が鉄化していく様子に戸惑います。

もう一人の登場人物は"やつ"。彼は自らの身体に無理な肉体改造を施そうとしましたが、失敗し、その結果、蛆がわいた脚を持つ状態に。追い詰められたあげく、車にひかれてしまいます。しかし、この事故は単なる不運ではなく、やつは死をもって"男"に復讐を誓うのです。やがて、体が鉄に覆われた男は、やつと悲劇的な対峙を果たすことになります。

作品の背景

『鉄男』という題名は、大友克洋の漫画『AKIRA』の登場人物「鉄雄」に由来しているとも言われています。興味深いことに、塚本監督は、作品の制作に際し、当時の『AKIRA』の中で「鉄雄」が鉄化していない状態だったため、このタイトルにしたとも述べています。また、諸星大二郎の漫画『生物都市』との類似点も指摘されており、塚本監督自身も過去にこの作品に触れていたものの、制作時にはその存在を忘れていたことがその後の類似点指摘で明らかになりました。

主なキャスト

• - 男（田口トモロヲ）：普通のサラリーマンである男が、やつとの遭遇後に体全体が金属に覆われていく過程を演じています。
• - やつ（塚本晋也）：運命的に男に轢かれたことで頭に金属棒を得たやつは、人間の身体に金属を同化させるという特殊な能力を身につけます。
• - 女（藤原京）：男の恋人として、彼を支えながらも物語の中で重要な役割を果たします。
• - 眼鏡の女（叶岡伸）：やつによって操られるOLで、物語の中で男を襲う刺客となる。
• - 医者（六平直政）：やつを診察する医者で、作品の中で重要な役割を果たします。
• - 謎の浮浪者（石橋蓮司）：男を襲う際に現れる謎の存在。

受賞歴とシリーズ作品

本作は1989年のローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞し、その評価を受けています。『鉄男』の成功を受け、シリーズ作品も制作されました。「普通サイズの怪人」や「鉄男II BODY HAMMER」など、フォロワー作品では異なるストーリーが展開されています。特に、「鉄男II BODY HAMMER」や「鉄男 THE BULLET MAN」は、シリーズとして継承されているものの、物語はそれぞれ独立しています。

映画の影響

映画『桐島、部活やめるってよ』の中では、映画好きの主人公が劇中で『鉄男』を視聴するシーンがあり、クライマックスシーンの映像が使用されています。これは後の世代においても『鉄男』の影響力を証明するものとなっています。

独特な映像美とエッジの効いたストーリーが印象的な『鉄男』は、塚本晋也監督の名作として、今なお多くの映画ファンに愛されています。

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