難波葱

難波葱：大阪の伝統野菜の復活物語

古くから大阪で栽培されてきた難波葱は、ネギの一種であり、かつては「葱の海」と呼ばれるほど盛んに栽培されていました。しかし、戦後、機械化に適さない性質や宅地化の進行によって生産量が激減、2000年前後には市場から姿を消してしまいました。

歴史を紐解くと、難波葱のルーツは古く、和銅4年（711年）頃に伏見稲荷大社創建に際して浪波から移入されたネギが、九条葱の祖先になったという口碑が残されています。また、大阪夏の陣・冬の陣後、関東地方に移住した人々が持ち込んだネギは、千住葱のルーツになったとも言われています。江戸時代には大阪府で盛んに栽培され、南海なんば駅開業時（1885年）には駅周辺に広大なネギ畑が広がっていました。

しかし、強いぬめりによる機械収穫の難しさや、生産性向上のために新しい品種への転換、そして都市化の波によって、難波葱は衰退の一途を辿ります。

そんな中、2010年、有志らによって「難波葱の会」が結成されました。彼らは料理人に協力を依頼し、メニューへの採用やPRイベントの実施など、地道な活動を続けました。その努力が実り、2017年には大阪府の制度に基づき「なにわの伝統野菜」として認証され、大阪市の「大阪市なにわの伝統野菜」としても認証されています。2018年には「難波葱フェスタ」が開催され、難波葱は新たな特産品として広くPRされました。

現在では大阪府松原市を中心に約50人が栽培を行い、その復活劇は大きな成功を収めています。なお、鴨南蛮の語源が難波葱であるという説も存在します。

難波葱の特徴

難波葱は、他のネギとは異なるいくつかの特徴を持っています。

分蘖（ぶんけつ）が多い: 根元から多くの株が分かれて成長します。
つぼみの発生数が多い: 多くのつぼみが発生します。
赤色に着色する個体がある: 地面付近の皮の部分が赤くなる個体も見られます。
強い甘みと香り、ぬめり: 独特の強い甘みと香りに加え、ぬめりも特徴です。
柔らかい食感: 火を通した料理に最適です。
しっかりとした根: 根っこまで利用できるため、様々な料理に活用できます。
* 糖度が高い: 旬の時期には糖度が10度を超えることもあり、フルーツトマトを凌ぐほどの甘さを誇ります。

この強い甘みと、独特の食感は、多くの料理人に高く評価されています。鍋料理はもちろん、すき焼きやぬた和えなど、様々な料理に使える万能なネギと言えるでしょう。「難波葱の会」事務局長の難波りんご氏は、根の部分を片栗粉をまぶして揚げる食べ方を推奨しています。

難波葱の未来

かつては絶滅の危機に瀕していた難波葱ですが、「なにわの伝統野菜」として認証されたことで、その生産と消費は着実に拡大しています。伝統野菜としての地位を確立し、大阪の食文化を支える存在として、その未来は明るいと言えるでしょう。これからも、多くの消費者に愛され、食卓を彩る存在として活躍していくことが期待されています。

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