青標紙

青標紙（あおびょうし）

青標紙は、江戸時代後期の幕臣であり国学者の大野広城（権之丞・忍軒）が著した武家故実を扱った書籍です。この書は全2巻から成り、前編は天保10年（1839年）に完成し、翌年には出版されました。後編は天保11年（1840年）に成稿され、翌年に出版が行われました。

概要

この書籍は、江戸幕府に仕官する武士が知っておくべき武家故実に関する情報を、懐中できる小型の折本としてまとめられています。具体的には、武家諸法度や御定書、軍令、軍役、勤番、武具、行列、関所通行、服制、鷹狩など、様々な規定や法令が解説されています。特に、大野は老中や目付に対しての伺書の書式を用い、これらの規定に関連する疑問や回答を詳述しています。この取り組みは書札礼としての役割も果たしています。

当時は、江戸幕府が法令の一般への周知を固く禁じていたため、大野はこの書籍を「300部限定」と厳格に刊行する慎重さを見せていました。しかし、大野の研究が著作『殿居嚢』や『泰平年表』など、先行する著作と関連して、武家故実の記述において規定に反しているのではないかとの疑念が持たれていました。

特に、『青標紙』では武家諸法度や関連法令が掲載されており、これが決定的な証拠とされました。このため、天保11年（1840年）6月9日には大野は綾部藩に永預とされ、その著書は発行禁止となり、刊行に関わった版元や関係者も処分を受けました。大野はその後、配流先で憤怒のあまり命を落としました。

著作の影響

青標紙の刊行後、書籍は完全に回収されることは叶いませんでしたが、後の時代には大正時代に刊行された『江戸叢書』によって、その全貌を知ることができるようになりました。この書籍は、江戸時代の武士社会や法令、武家故実の理解を深めるための重要な資料とされています。

参考文献

本書に関する詳細な情報は、以下の文献に記載されています。

• - 村井益男「青標紙」（『国史大辞典 1』、吉川弘文館、1979年）
• - 小宮木代良「青標紙」（『日本史大事典 1』、平凡社、1993年）

青標紙は、江戸時代の特異な背景を持つ武家社会の理解を助ける貴重な書物であり、武士たちの行動規範や倫理観の形成に寄与した一冊であると言えるでしょう。

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