書札礼

書札礼（しょさつれい）

書札礼とは、書簡を作成する際に遵守すべき礼法を指します。この術語は、特に歴史学や古文書学の分野で用いられ、古代から近世にかけての差出者と宛所の書き方、文面の構造、文字の書き方、紙の種類や封じ方に関わるルールを包括しています。書札礼は、社会的な地位や上下関係を反映したもので、書簡の基本的な形式が差出人の身分により異なることが特徴です。

書札礼の概要

書札礼では、身分が低い者が高い者に宛てる場合、直接伝えるのではなく、その高位者の側近や重臣に宛てて書く「進上書」という形式が一般的です。例えば、ある国の守護である石原氏宛に浜渦という側近がいる場合、その書簡は「進上　浜渦殿」として記されます。

同じく身分が貴族レベルの者同士の場合は、相手の住居地名や屋敷名を宛所にし、「謹上書」の形式を取ります。たとえば、石原氏の屋敷が新宿に位置していれば、「謹上　新宿殿」と記されることになります。また、下位の者から高位の者に出す場合は、相手の官位や名前を用いた「打付書」形式がとられ、「石原殿」と書かれるのが通常です。

これらの形式はあくまで基礎にすぎず、差出人の名乗りや署名、宛所の官位、名前、書体の種類などが微妙に異なり、身分秩序が巧妙に表現されています。また、文献史学や古文書学においては、書札礼を通じて人間関係や社会的秩序を理解する手法が活用されています。

歴史的背景

書札礼は、平安時代から鎌倉時代前期にかけてはあまり細かいルールが存在せず、各人の常識に委ねられていました。しかし、弘安8年（1285年）に亀山上皇が一条内経や花山院家定、二条資季らに命じて作成させた『弘安礼節』がその後の基本となります。この書は、書札礼や院中礼、路頭礼を含むもので、特に「弘安書札礼」と呼ばれる形式は朝廷内で採用されました。室町時代には幕府の書札礼としても使われ、明治維新に至るまで公武の両者において重要視され続けました。

参考文献

書札礼に関する詳細は、百瀬今朝雄著『弘安書札礼の研究ー中世公家社会における家格の桎梏』（東京大学出版会 2000年5月22日発行）をご覧ください。ISBN：4130201247

関連項目

• - 右筆
• - 追而書

書札礼は、単なる書簡に留まらず、古代から近世に至るまでの日本の社会的枠組みや身分のあり方を映し出す、重要な文化的遺産とも言えるでしょう。

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