高岩成二

高岩成二：特撮ヒーローを演じ続けた男

高岩成二（たかいわ せいじ）は、1968年11月3日生まれの日本の俳優、スタントマン、そしてスーツアクターです。埼玉県出身で、ジャパンアクションエンタープライズ（JAE）に長年所属し、主に東映制作の特撮テレビドラマシリーズで主役ヒーローのスーツアクターを務めてきました。彼の身長は175センチメートルで、元女優の村上利恵さんと結婚しています。

幼少期からアクションの世界へ

高岩は、テレビCMで見た真田広之に憧れ、16歳でジャパンアクションクラブ（JAC、現JAE）の養成所に入所しました。JAC16期生として、横山一敏、今井靖彦、竹内康博など多くの同期とともに切磋琢磨しました。養成所卒業後、後楽園ゆうえんちのショーで『光戦隊マスクマン』のアングラー兵やブラックマスク役を担当し、その後『超獣戦隊ライブマン』ではレッドファルコン役で初めてレッド役を経験しました。後楽園のショーには7年間出演し、『仮面ライダーBLACK RX』ではライダーマン役を務めるなど、テレビでも活躍の場を広げました。

スーツアクターとしての転機

1992年、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のドラゴンレンジャー役で本格的にスーツアクターとしてのキャリアをスタートさせます。1994年には、『忍者戦隊カクレンジャー』のニンジャレッド役で初の主役スーツアクターを務め、1998年には『星獣戦隊ギンガマン』のギンガレッド役で再びレッド役を務めました。この時期には、女優の村上利恵さんと結婚し、公私ともに充実した日々を送っていました。スーパー戦隊シリーズでは、『ギンガマン』から『未来戦隊タイムレンジャー』まで3作品連続でレッド役を務めました。

2001年からは『仮面ライダーアギト』で主役・仮面ライダーアギトのスーツアクターを担当。以降、平成仮面ライダーシリーズでは『仮面ライダー響鬼』を除く全作品で主役ライダーを演じ、その存在感を示しました。2005年には『魔法戦隊マジレンジャー』で5年ぶりにレッド役を務めています。2007年の『仮面ライダー電王』では、モモタロスのスーツアクターだけでなく、複数のフォームを演じ分け、高い評価を得ました。

多彩な活動

高岩は、JAE所属俳優による音楽ユニット「J-MEN」にも参加し、歌手デビューも果たしています。また、近年ではアクションのワークショップを不定期に開催し、アクションの普及にも貢献しています。2021年10月には、長年所属していたJAEとの契約を終え、フリーとして活動を開始しました。2022年には、Webドラマ『グッドモーニング、眠れる獅子』で顔出し初主演を果たし、実子である高岩芯泰も出演しています。

人物像

高岩は、兄と妹のいる3人兄弟の次男です。父親は仕事で家を空けることが多く、幼少期は母親と兄弟、祖父母と過ごすことが多かったようです。好きな食べ物は梅干しとサクランボ、嫌いな食べ物は固形チーズで、好きな色は黒。趣味は食べ歩きで、特技は剣道と柔道です。スポーツ全般が得意ですが、持久走は苦手で、高所恐怖症である一面も持っています。また、SF作品にはあまり興味がなく、『スター・ウォーズ』シリーズも見たことがないそうです。仕事柄、路上観察が癖になっており、その熱中ぶりを妻によく注意されるとのことです。

スタイルとアクション・演技へのこだわり

高岩は、平成仮面ライダーシリーズで最も多く主人公ライダーを演じていますが、作品ごとにアクションスタイルを使い分けています。特に『仮面ライダー龍騎』以降は、変身前の人物描写との一体性を重視した役作りを行っています。このスタイルは、『電磁戦隊メガレンジャー』のメガブルー役で試みたことがきっかけだったそうです。彼は、変身前の役者の所作や癖を把握し、それをアクションに取り入れることで、キャラクターの深みを増すことを心がけています。また、アクションの際には、一昔前の白黒映画や時代劇などを参考にすると引き出しが増えると語っています。

顔出しの役者との芝居の擦り合わせでは、テスト時にスーツアクターの表情をしっかり作り込んで演じることで、監督に演技を覚えてもらうように工夫しています。また、『仮面ライダーアギト』で経験した動作の制限から、「動かない芝居」も表現の一つとして捉え、感情が演技に乗っていれば動く必要はないと考えています。

エピソード

幼少期は、やんちゃな子供で、よく公園の噴水に落ちていたそうです。特撮番組が好きで、仮面ライダーやゴレンジャーの真似をして遊んでいました。特に仮面ライダー2号がお気に入りで、アクションドラマのエンディングに「アクション/JAC」という文字を見ていたものの、映画『忍者武芸帳 百地三太夫』を観るまでJACの存在を認識していなかったそうです。幼稚園の頃から剣道を習い始めましたが、低身長のためにパワハラを受けた経験から辞めたいと訴えたものの、父親に「何をやっても3年は続けろ」と諭され、3年間は稽古を続けました。この経験が、後のアクションの基礎となったと言います。

小学生の頃には、スタントマンか体育教師になりたいと考えていましたが、中学時代にJACの存在を知り、アクション俳優を目指すようになります。高校時代は、JAC養成所と並行して器械体操部にも所属しました。JAC入所時には、両親から高額な入所金に反対されましたが、兄の賛同もあり、「25歳までに芽が出なければ辞める」という条件で、養成所に通うことになりました。

養成所では、アクションだけでなく演技にも熱心に取り組みました。最初はスーツアクターをやりたくなかったものの、後楽園ゆうえんちのショーでアクションの魅力に気づき、『光戦隊マスクマン』のアングラー兵役でデビューしました。『超獣戦隊ライブマン』では、レッドファルコン役を任され、戦隊のヒーローショーのライブ感に魅了されました。しかし、ショーの合間の握手会は過酷で、休憩時間もわずかだったそうです。

平成仮面ライダーシリーズ

平成仮面ライダーシリーズには、『仮面ライダーアギト』から『仮面ライダージオウ』まで参加し、ミスター平成ライダーとも呼ばれています。体力的に充実していたのは『電王』から『ディケイド』の時期で、『ドライブ』や『ゴースト』の頃には衰えを感じるようになったそうです。平成仮面ライダー最終作の『ジオウ』を節目に主役ライダーのスーツアクターを勇退しましたが、『仮面ライダーゼロワン』では仮面ライダー滅のスーツアクターを担当しています。

各作品でのエピソード

『仮面ライダーアギト』では、スーパー戦隊シリーズで培ったナチュラルな芝居が過剰表現として捉えられ、監督から「動かない芝居」を教えられました。また、顔出しの役者との掛け合いでは、スーツアクターが喋れない制約があるため、体の向きだけで台詞の合図を伝えるなどの工夫をしました。撮影方法がビデオ撮影であったため、コマの速度調整ができず、アクションがそのまま反映されるため、細かくカット割りをすることで冗長さを抑える手法がとられました。

『仮面ライダー龍騎』では、変身前後でのキャラクターのリンクを意識するようになり、第1話のセリフは高岩のアドリブです。13人の仮面ライダーが登場するため、個々のキャラクターの特色を出すための芝居が大変でしたが、スーツアクターとしての方向性が見え始めた作品でもありました。

『仮面ライダー555』では、ジェットコースターに乗るシーンで、高所恐怖症の半田健人の代役を務めました。また、木場勇治が変身するファイズの表現に苦労したそうです。撮影中に父親が危篤になった際にも、撮影を優先したため、最期に立ち会えなかったというエピソードもあります。

『仮面ライダー電王』では、モモタロスのキャラクター造形に大きく貢献し、モモタロスが憑依した電王ソードフォームだけでなく、異なる人格のフォームも演じ分けました。この作品では、20年近いキャリアの引き出しを全て使い切ったと語っています。

『仮面ライダーゴースト』では、仮面ライダーゴーストのスーツアクターのほか、顔出しで敵幹部ジャイロ役も演じました。これは、ファンから「花を持たせるための役ではないか」と噂されたそうです。

『仮面ライダージオウ』では、主役の年代設定が高校生であったため、無理を感じるようになり、この作品を最後にスーツアクターを卒業することを意識したそうです。

スーパー戦隊シリーズ

スーパー戦隊シリーズでは、複数人で戦える安心感や、レッドが脇役になることもある新鮮さが魅力だと語っています。『恐竜戦隊ジュウレンジャー』では、初登場から数回と終盤の数回しか出演しておらず、撮影に慣れていなかったため、監督から厳しく指導されたそうです。『忍者戦隊カクレンジャー』では、新堀和男からレッドの心得を教わったものの、自分なりのレッドを演じることに開き直ったと語っています。

『電磁戦隊メガレンジャー』では、レッド役よりも自由度が高かったメガブルー役で、ナチュラルな動きを取り入れました。『星獣戦隊ギンガマン』や『救急戦隊ゴーゴーファイブ』の頃には、大袈裟な演技に疑問を持つようになり、変身前の役者と密に語り合い、演技の擦り合わせを行いました。

2005年の『魔法戦隊マジレンジャー』では、撮影を心から楽しんだそうですが、平成ライダーの『仮面ライダーカブト』への復帰が決まった後は、撮影現場で「1年ゲスト」と弄られていたそうです。

メタルヒーローシリーズ

『重甲ビーファイター』への参加は、アクション監督の入れ替えによるもので、竹田道弘からの指名に応えたかったそうです。『ビーファイターカブト』では、念願の顔出し役を貰ったものの、演技力不足を痛感し、以降はスーツアクターとして生きることを決めたそうです。

その他

『仮面ライダーBLACK RX』では、顔の半分が出ているライダーマン役を勧められましたが、当時は恥ずかしさを感じていたそうです。また、テレビでの演技が初めてだったため、舞台的なアクションになってしまったことを反省点としています。元SKE48の松井玲奈さんは、高岩の大ファンとして知られています。

出演作品

高岩は、数多くのテレビドラマや特撮作品、映画、舞台、Webドラマに出演しています。また、PVやゲーム、CMにも参加しており、多岐にわたる活動をしています。詳しい出演作品については、記事末尾のリストを参照してください。

高岩成二は、その卓越したアクション技術と演技力で、多くの特撮ファンを魅了し続けている偉大なスーツアクターです。彼のこれからの活躍にも目が離せません。

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