高沼用水路

高沼用水路について

高沼用水路は、埼玉県さいたま市に位置する灌漑農業用水路です。一般的には「高沼用水」とも呼ばれますが、さいたま市役所では「高沼用水路」という名称が正式に用いられています。

流路

この用水路は、さいたま市大宮区北袋町において見沼代用水西縁から取水（分水）を開始します。そこから南西方向に流れ、大宮台地とさいたま新都心の下を暗渠で通過し、中央区下落合（与野本町駅東）で東縁と西縁に分岐します。

東縁：鴻沼川の東側を並行しながら台地の縁に沿って南下し、南区鹿手袋で西に流路を変え、中浦和駅の下を通過して関で鴻沼川に合流します。かつては鹿手袋三丁目付近で分水し、鹿手袋村の用水として利用されていた水路がありましたが、現在は暗渠化され、歩道として整備されています。中浦和駅周辺は以前から暗渠化され歩道が整備されていましたが、2014年にはそこから鴻沼川への合流点までの区間がボックスカルバートによって暗渠化されました。
西縁：鴻沼川を渡り、その西側を並行して南下し、東縁との合流地点から30m下流の桜区西堀で鴻沼川に合流します。

両縁を合わせた総延長は約10kmに及びます。

歴史

高沼用水路が流れる地域は、かつて北から霧敷川が流れ込む鴻沼（高沼）という沼地でした。この沼は、下流域の17の村の灌漑用水として利用されていました。江戸時代、享保の改革を進めていた将軍・徳川吉宗の命により、井沢弥惣兵衛が見沼代用水の開削と見沼干拓を実施しました。その事業が完了した後の1729年から、鴻沼の干拓にも着手しました。

干拓工事は、見沼干拓と同様に、用水路を開き排水路を設ける「紀州流」と呼ばれる手法で行われました。高沼用水路は、見沼代用水西縁と鴻沼の間の台地を切り開き、導水路を建設。霧敷川が鴻沼に流入する上流で、用水路を東縁と西縁の二手に分けました。東縁は鴻沼東岸の台地に沿って南下させ、西縁には霧敷川を合流させ、鴻沼西岸の台地に沿って南下させました。

また、同時に鴻沼の中央に鴻沼排水路（現在の鴻沼川）を新しく掘り、鴨川へ放水することで沼を干拓し、62haの「鴻沼新田（高沼新田）」が拓かれました。

明治時代に入ると、高沼用水路は水利組合によって管理されるようになりました。しかし、昭和30年代に入ると周辺の宅地化が進み、灌漑用水としての役割は薄れていきました。西縁に流入していた霧敷川は、1965年に治水のため鴻沼排水路（現在の鴻沼川）へ付け替えられました。1999年には、用水路の管理が市に移管され、現在は普通河川として扱われています。

橋梁

高沼用水路には、以下の橋梁が架かっています。

境橋（高沼分水工）
（埼玉県道35号川口上尾線）
鴻沼橋
（埼玉県道56号さいたまふじみ野所沢線）
（この間暗渠）
高台橋（埼玉県道164号鴻巣桶川さいたま線）
（東北本線）
（この間暗渠）
（西大通り）
高谷橋
（暗渠・さいたま市立下落合小学校）
名称不明
名称不明（さいたま市立与野東中学校前）
名称不明
（埼玉県道159号さいたま北袋線）
落合橋（国道17号）
本村橋
（埼玉県道119号与野停車場線）
境橋
用水橋
橋戸橋

この下流には、高沼用水路の東縁と西縁に多くの橋がありますが、名前の付いた橋は多くありません。

関連情報

関連項目:
用水路
鴻沼、鴻沼資料館
鴻沼川
見沼代用水、見沼代用水西縁、辻用水
外部リンク:
高沼用水路整備基本計画策定会議 - さいたま市ホームページ
高沼導水路・用水路位置図 (PDF) - さいたま市ホームページ
高沼用水路（西縁・東縁・導水路）の整備手法概要がまとまりました - さいたま市ホームページ
* 鴻沼川と鴻沼用水 - ウェイバックマシン（2019年1月1日アーカイブ分） - 有限会社フカダソフト（きまぐれ旅写真館）


高沼用水路は、その歴史と流れの中で、地域の人々の生活や文化に深く関わってきました。現在では灌漑用水としての役割は薄れていますが、その存在は貴重な水路遺産として、今もなお地域の人々に親しまれています。

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