魚眼レンズ

魚眼レンズ：世界を丸く捉えるレンズ

魚眼レンズは、その名の通り、魚が水中から水面を見上げた時のような、独特の歪みで世界を捉える写真レンズです。通常のレンズが被写体の歪みを極力抑えるのに対し、魚眼レンズは歪みを積極的に利用することで、超広角の範囲を一枚の写真に収めます。そのため、直線は曲線として写り込み、ダイナミックで印象的な写真表現を可能にします。

魚眼レンズの原理：射影方式

魚眼レンズの歪みは、レンズの設計による「収差」ではなく、意図的に採用された「射影方式」によるものです。主な射影方式には、以下の3種類があります。

等立体角射影: 国内レンズの主流。立体角（空間における角度）に比例して画像面積が変化するため、雲の量を測るなど、面積の正確な表現が求められる用途にも利用されます。画面中央が大きく、周辺は圧縮されて写ります。
等距離射影: 海外レンズの一部に採用。中心からの距離と角度が比例するため、星の位置測定などに適しています。周辺の圧縮効果は等立体角射影より小さく、中央部のスケールは小さくなります。
正射影: 非常に珍しい方式。かつてニコンが製造したレンズに採用されていました。被写体の輝度が画面全体で均一になるため、日照研究などに用いられます。等距離射影より中央部が大きく写ります。

これらの射影方式の違いによって、同じ被写体でも全く異なる印象の写真が得られます。

魚眼レンズの種類：全周魚眼と対角線魚眼

魚眼レンズには、大きく分けて以下の2種類があります。

全周魚眼（円周魚眼）: イメージサークル径（レンズが投影できる範囲）が画面の対角線よりも小さいレンズ。得られる画像は円形です。
* 対角線魚眼: イメージサークル径が画面の対角線よりも大きいレンズ。得られる画像は矩形です。小型軽量で、一般撮影にも使いやすいタイプです。

どちらも、イメージサークル径の違いだけで、トリミングによって同じイメージを得ることが可能です。

魚眼レンズの画角

魚眼レンズといえば「画角180度」というイメージが強いですが、実際には画角は様々です。180度を超えるものや、それ以下のものも存在します。ニコンの過去の製品の中には、220度の超広角レンズもありました。また、近年はズーム機構を搭載した魚眼レンズも登場しています。

一般的に、魚眼レンズは超広角レンズ以上の画角を持つレンズとして販売されています。これは、射影方式の効果が、広角になるほど顕著になり、望遠ではその効果が小さくなるためです。望遠の魚眼レンズには商品価値が低いと言えるでしょう。

まとめ

魚眼レンズは、その独特の歪みと超広角によって、通常のレンズでは得られない表現力を提供するレンズです。様々な射影方式、画角、そして全周魚眼と対角線魚眼といった種類があり、撮影目的や好みに合わせて選ぶことができます。その個性的な描写は、風景写真や天体写真、建築写真など、多様な分野で活躍しています。それぞれの射影方式の特徴を理解することで、より効果的な写真撮影が可能となるでしょう。

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