黄色い本

概要

『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』は、高野文子による漫画作品集であり、2002年に刊行されました。この作品は、講談社のアフタヌーンKCデラックスシリーズの一環として発表され、高野の単行本として7年ぶりのリリースとなります。また、2003年には第7回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど、その評価は高まっています。

収録作品

この作品集には、女子高校生の田家実地子を主人公とした表題作が収められています。彼女は北部の田舎町で暮らし、図書館で借りた本をじっくりと読み進める日常が描かれています。その過程で、彼女は本の中の登場人物、ジャック・チボーたちと交流し、革命についての会話を通じて自らの生活を振り返ることになります。作品は5つの章に分かれており、特に大きな出来事はなく、静かな日常の中での心の変化を丁寧に追っています。また、各章の冒頭にはカエルが主人公の4コマ漫画が付され、ユニークな印象を与えています。

登場人物

• - 田家実地子（たい みちこ）: 裁縫が得意な高校生で、周囲から「実ッコ」と親しまれています。彼女は本を通じて難しい言葉を使うこともありますが、地元での生活に身近な視点を持っています。
• - 留美（るみ）: 実地子の従妹であり、実地子の家に預けられています。彼女は実地子に対して構ってもらいたいと思っています。
• - 基根夫（きねお）: 実地子の弟。

制作背景

この作品は、3年の制作期間を経て完成されました。高野文子は、作品を通じて読書の価値を伝えようとしたわけではなく、自身の読書体験を描きたかったと語っています。作品には、漢字や言葉が絵の一部として存在する形で、視覚的な工夫がされています。コマの配置は規則的であり、読み手に心地よいペースで物語を感じ取ってもらえるよう配慮されています。また、作者は作品の舞台や年代設定を自身の少女時代に基づいているものの、キャラクターにはアレンジを加えています。

批評

『黄色い本』は当初の反響は控えめでしたが、後の単行本発売を経て多くの評論家に注目されることとなりました。特に呉智英はこの作品を高野の最高傑作と呼び、斎藤環はその独特の絵画的構成を高く評価しています。また、作品内の多様な語りの展開や読書の追体験といった挑戦的な試みに言及する意見も見られます。

他の収録作品

作品集には他にも多様な短編が収められています。たとえば、「Cloudy Wednesday」では親子の交流が描かれており、1970年代を舞台にした整然としたコマ割りが特徴です。「マヨネーズ」では、OLの日常を通じた人間関係の複雑さが表現されています。

全体を通して、高野文子の作品集は、独自の視点や手法を駆使して日常の豊かさを浮き彫りにしており、読者に深い感慨を与えることができます。

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