呉智英

呉智英の人物像

呉智英（くれともふさ）は、1946年9月19日に愛知県西枇杷島町（現・清須市）で生まれた日本の評論家であり、マンガ評論家です。本名は新崎智（しんざきさとし）で、ペンネームは『水滸伝』のキャラクター「呉用」に由来しています。彼は長年にわたって日本マンガ学会の役員を務め、現在は京都精華大学マンガ学部の客員教授として教鞭を執っています。

学生時代と初期の経歴

呉は東海高校を経て1965年に早稲田大学法学部に入学し、学生運動に参加しました。特に全共闘運動に関わり、学費値上げ抗議行動では逮捕された経験も持ちます。彼の学生時代は非常に活発で、文学研究会に所属しながら社会科学研究会との親交も深めました。卒業後、友人のコンピュータ会社に勤務しつつ文筆業を開始しました。彼の転機は1988年に出版された『バカにつける薬』がベストセラーとなり、以降は安定した生活を手に入れました。

1981年には初の単著『封建主義、その論理と情熱』を発表し、当時の民主主義や人権論の矛盾を指摘し、封建主義に光を当てました。この著作によって、呉は既存の進歩主義勢力の批判者として知られるようになります。彼は自らの思想を深く掘り下げ、特に新左翼の思想に対する批判的立場から名を馳せました。

漫画評論における影響

呉智英は、1960年代から1980年代の少年・青年漫画を対象にして、独自の評論を展開してきました。彼は漫画評論同人誌『漫画主義』に寄稿し、著名な漫画家についての分析を行ったことでも知られています。しかし、1990年代以降の漫画が多様化する中で、彼の関心は薄れていきました。特に、人気作品の一つである『クレヨンしんちゃん』には強い拒否感を示し、理解できないとしています。

言葉と文化に関する考察

また、呉は言葉に対する独自の視点を持ち、特に「すべからく」の誤用についても批判的に言及しています。この言葉が多くの著述家により誤用される背景を分析し、自己を高尚に見せようとする習慣が問題であると指摘しました。言語の運用方法について、自身の経験を元にした鋭い考察を提供しています。

政治思想とその影響

彼は自身の政治思想において、「共産主義と民主主義・人権思想は同根である」と主張しています。これに基づき、歴史的な文脈に照らして共産主義の発展を考察し、フランス革命を引き合いに出しながら、具体的な解放が最終的な人間性の解放につながると説いています。また、日本の侵略の歴史についても言及し、批判を受け入れつつもダブルスタンダードに対する指摘をしています。

人物としての魅力とエピソード

呉智英はその独自の人物像でも知られ、彼自身の弁によれば学生運動の際には「大佐ぐらいの位だった」と自負しています。彼は常に上機嫌で、甘口が好きな一方で、野球や占いにはあまり興味を持っていません。メガネをかけた女性に特別な魅力を感じると述べており、独身主義を貫いています。

生活の中では、漫画を通し、言語や思想に対する鋭い観察を続け、彼の著作には強い個性が表れています。『マンガ狂につける薬』などの著書にその思想を色濃く反映させており、現在も文学・思想界に影響を与え続けています。

主な著作

彼の著作には多くの著名なものがあり、『封建主義、其の論理と情熱』、『バカにつける薬』、『現代人の論語』などが代表的です。また、彼の活動は多岐にわたり、評論活動だけでなく、漫画家との交流や教育的な取り組みも見受けられます。

呉智英は、独自の視点を持ちつつも、常に社会や文化について鋭い洞察を提供する重要な評論家であり続けています。

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