龍斎逸馬

龍斎逸馬（生没年不詳）は、江戸時代に活躍した浮世絵師です。師である蹄斎北馬から絵画の技術を学び、独自の画風を確立しました。名は英信と伝えられ、葛飾の画姓を称していたと言われています。

逸馬の作画期は天保年間（1830年 - 1844年）頃とされており、この時期に肉筆浮世絵を多く残しました。彼の作品は、美人画に優れており、繊細な筆致と色彩で描かれた女性像は、当時の人々の心を捉えました。

文化年間（1804年 - 1818年）には、龍斎逸坡（りゅうさい　いつは）という絵師がおり、研究者の間では、逸馬と逸坡が同一人物ではないかという説も提唱されています。もし同一人物であるならば、逸馬は比較的長い期間にわたって絵師として活動していたことになります。

現在確認されている逸馬の作品は多くありませんが、その中でも特に知られているのが以下の作品です。

美人更衣図: 紙本著色で描かれた作品で、熊本県立美術館に所蔵されています。「龍斎逸馬画」の落款と、「逸」「馬」の白文方印が確認できます。女性が着替える様子を描いたもので、当時の風俗を知る上でも貴重な資料となっています。
湯上り美人図: こちらも紙本着色で描かれた美人画です。「龍斎逸馬画」の落款があります。湯上りの女性の姿を描いたもので、逸馬の描く女性の美しさが際立つ作品と言えるでしょう。

逸馬に関する研究はまだ十分に進んでいるとは言えませんが、残された作品から、当時の浮世絵界において一定の評価を得ていたことが伺えます。今後の研究によって、彼の生涯や画業について、更なる詳細が明らかになることが期待されます。

参考文献

日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）、大修館書店、1982年
熊本県立美術館編『今西コレクション名品展Ⅰ』、熊本県立美術館、1989年、177頁

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