(秘)女子大生 妊娠中絶

(秘)女子大生 妊娠中絶

1969年に公開された、小西通雄監督による日本映画。東映が製作・配給を手掛けた、R18+指定の風俗映画である。本作は、性解放が叫ばれ始めた時代を背景に、女子大生の奔放な性生活を描き、社会に衝撃を与えた。

作品概要

1960年代後半、日本社会は性に対する意識が大きく変化しつつあった。そのような時代背景の中、本作は、快楽を求めてフリーセックスを実践する女子大生たちの姿を赤裸々に描いた。当時の東映は、任侠路線と並行して「性愛路線」を展開しており、本作はその一環として製作された。刺激的なタイトルや過激な描写は、当時の観客に大きな衝撃を与え、賛否両論を巻き起こした。

キャスト

みさ子：賀川雪絵
茂太郎：加藤嘉
修：山本豊三
たま江：橘ますみ
好文：鶴見丈二
和子：安城由貴子
はな：浦辺粂子
軍平：中村是好
荘吉：玉川良一
安久里：根岸明美
ヨキ子：小磯マリ
阿以子：曽我町子
純：久里みのる
禎治：藤村有弘
いね：白木マリ
麻理子：木山佳
美樹：小林千枝
西原：河合絃司
研三：沢彰謙
男事務員：大泉滉
刊事A：相馬剛三
刊事B：久保一
学生風の男A：小林稔侍
学生風の男B：須賀良
学生風の男C：中島義信
学生風の男D：旭洋一郎
喬：梅宮辰夫

スタッフ

監督：小西通雄
脚本：北沢三六、佐伯嘉則
企画：園田実彦、安斎昭夫
撮影：山沢義一
美術：北川弘
音楽：伊部晴美
録音：内田陽造
照明：銀屋謙蔵
編集：祖田富美夫
* レズビアン指導：秋山正美

製作の背景

本作は、東映の岡田茂常務が推進した「性愛路線」の一環として製作された。当時、東映は「㊙シリーズ」を看板に、性的なテーマを扱った作品を多数制作していた。本作もその流れを汲むものであり、過激なタイトルと描写で、観客の耳目を集めることを狙った。

当初のタイトルは『女子高生の性生活』だったが、東映側の判断により『(秘)女子大生 妊娠中絶』に変更された。これは、女子高生を題材にしたエロ映画を制作することへの倫理的な懸念や、女子大生の方がより過激な描写をしやすいという事情があったとされる。また、タイトルには「妊娠中絶」という、当時タブー視されていた言葉が使用され、大きな話題となった。

撮影秘話

本作の見どころの一つとして、橘ますみと賀川雪絵による全裸のレズビアンシーンが挙げられる。撮影に先立ち、2人はレズビアンの演技指導を受けた。このシーンの撮影は、マスコミにも公開され、大きな注目を集めた。当時、同性愛をテーマにした映画は珍しく、大手映画会社が全裸の同性愛シーンを撮影するのは、非常に異例なことだった。

また、東映労働組合は、本作における女子学生のレズビアン描写や、トルコ風呂でのアルバイト描写を問題視し、「低劣で薄汚い好奇心で凝り固まった映画」と批判した。

興行と評価

本作は、1969年の春休み東映まんがまつりの直前に公開された。当時、映画館には次回予告の看板やポスターが掲示されていたため、本作のポスターが子供たちの目に触れることもあった。興行的には成功を収めたものの、その過激な内容から、社会的な批判も少なくなかった。

批評家からは、本作のような性や暴力を扱った作品が、必ずしも観客に受け入れられるものではないという指摘や、日本のエロ映画が、北欧の映画と比べて質が低いという批判もなされた。

他作品への影響

本作の成功を受け、東映以外の映画会社も、性的なテーマを扱った作品を制作するようになった。特に、日活は東映の路線を徹底的に模倣し、自社の作品を東映風に仕立てようとした。しかし、その結果、各社は観客動員数を減らし、映画業界全体が衰退していくことになった。

まとめ

『(秘)女子大生 妊娠中絶』は、当時の社会情勢を反映した、衝撃的な風俗映画である。過激な描写やタブーに挑戦する姿勢は、賛否両論を巻き起こしたが、映画史に残る問題作として、その名を刻んでいる。

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