(706765) 2010 TK7

(706765) 2010 TK7

(706765) 2010 TK7は、地球の軌道上において確認された最初のトロヤ群小惑星として知られています。この天体は、太陽と地球の重力が釣り合う特殊な領域、特にラグランジュ点L4で発見されました。トロヤ群小惑星自体は、木星の軌道上に多数存在することが古くから知られており、その他にも火星、海王星、そして土星の衛星の軌道などでも見つかっていますが、地球の軌道上で発見されたのは2010 TK7が初めての事例となりました。

この小惑星の大きさは、直径がおよそ300メートルと見積もられています。軌道の特徴としては、太陽と地球を結ぶ直線に対し、地球から見て約60度前方にあるラグランジュ点L4を中心に、「秤動（ひょうどう）」と呼ばれる独特の運動をしています。これは、L4の正確な位置に留まるのではなく、その点を中心として楕円を描くように揺れ動く軌道です。2010 TK7の場合、この秤動運動によって、L4の中でも地球に最も近づく地点と最も遠ざかる地点の間を往復しており、その周期はおよそ400年という非常に長い時間をかけています。

2010 TK7の発見は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が運用する広域赤外線探査衛星（WISE）によって実現しました。WISE衛星は、その観測ミッション「NEOWISE」において、地球に接近する可能性のある天体（地球近傍天体、NEO）の捜索を主な目的の一つとしていました。このミッションによる観測データの中から、2010年10月に2010 TK7が初めて検出されました。

初期の観測データに基づいて軌道計算が進められた結果、この天体が地球のトロヤ群に属する可能性が浮上しました。その後の継続的な観測によって、軌道が正確に特定され、2011年7月には正式に地球のトロヤ群小惑星であることが確認され、発表されました。2010 TK7の発見は、地球の軌道にも比較的大きなトロヤ群小惑星が存在しうることを示す重要な発見であり、太陽系内の小惑星分布やダイナミクスを理解する上で貴重な情報をもたらしています。

この発見以降、地球の軌道における他のトロヤ群小惑星の捜索も続けられており、2010 TK7は地球のラグランジュ点周辺の天体を探査する上での基準点の一つとなっています。その独特な軌道と比較的大きなサイズは、今後の詳細な観測や、将来的には探査ミッションの候補となる可能性も示唆しています。地球近傍天体研究コミュニティの間で議論されています。

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