秤動

秤動（ひょうどう）

秤動とは、ある天体がその周囲を公転する衛星を観察した際に、衛星が見かけ上で行う、または実際に行う緩やかな振動運動を指します。この現象は特に、地球を周回する月に関連して言及されることが多いです。「秤動」という表記は本来「ショウドウ」と読むべきですが、混同を避けるために「ヒョウドウ」と呼ばれています。これにより、「章動」や「摂動」と区別されています。

月の秤動

月は地球の周囲を公転しており、同時に自転周期が公転の周期と一致していることから、月の同じ面が常に地球に向いています。しかし、秤動が影響することで、地球上の観測者は月の裏側の一部を見ることができます。結果として、地球からは月の表面の約59%を観察することができます。秤動は、光学的秤動と物理秤動の2種類に分類されます。

光学的秤動

光学的秤動（optical libration）は、主に月の見かけの動きに関連します。月の自転軸が公転の法線に対してわずかに傾いている振動を示し、これが観測される方向に影響を与えます。月の緯度秤動と経度秤動の要素もここに含まれます。

緯度秤動

緯度秤動（libration in latitude）は、月の自転軸が公転面に対して約1.5度傾いているために生じる動きです。この現象は、地球の自転軸が公転面に対して傾いていることで四季が生じるのと類似の理由があります。このため時折、観測者は月の北極や南極の一部を観察することが可能です。この変化の周期は、1分点月という周期で起こります。

経度秤動

経度秤動（libration in longitude）は、月が地球の周囲を公転する際、軌道が非常にわずかに楕円形であるために自転が軌道位置に対して進みすぎたり遅れたりすることで発生する現象です。

日周秤動

日周秤動（diurnal libration）は、地球上の観測者の位置が自転することに起因し、観測時刻に応じた視差が生じることを示しています。このため、月の出の際には月の西側の端が見え、月が沈む際には東側の端が見えることになります。その視野の変化は約1度程度となります。

物理秤動

物理秤動（physical libration）は、月自体の形状が完全な球体ではないため、地球や太陽から受ける重力によって月がわずかに揺れ動く現象です。この揺れの程度は約3.5分程度と言われています。

脚注

• - J. D. Mulhollan, E. C. Silverberg, "Measurement of Physical Librations Using Laser Retroreflectors", Earth, Moon, and Planets, 1972, 4, 155-159.

外部リンク

• - APOD 11/8/99 - 月の秤動の連続写真
• - The Moon's movement - NMM online resource
• - 『秤動』 - コトバンク

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