Ε-カプロラクトン

ε-カプロラクトン：性質、反応、用途

ε-カプロラクトンは、7員環構造を持つ環状エステルの一種です。常温では無色の液体で、多くの有機溶媒によく溶ける性質を持っています。消防法では危険物第4類第3石油類に分類されています。

合成方法

工業的には、[シクロヘキサノン]]と過酢酸を用いたバイヤー・ビリガー酸化によって合成されます。この反応は、シクロヘキサノンのカルボニル基を酸化する反応で、ε-カプロラクトンを選択的に得ることができます。BASF社(アメリカ)、[[ダイセル]、Perstorp社(イギリス)などが主要な生産企業として知られています。

主要な用途

ε-カプロラクトンの最も重要な用途は、ε-カプロラクタムの原料となることです。ε-カプロラクタムはナイロン6の原料として広く用いられており、ε-カプロラクトンはその生産において重要な役割を果たしています。年間10億kg単位という大量のε-カプロラクトンが、この目的のために生産されています。

さらに、ε-カプロラクトンは、特殊なポリマーのモノマーとしても利用されています。特に、開環重合によって得られるポリカプロラクトン（PCL）は、生分解性ポリマーとして注目を集めており、医療用材料や包装材など、様々な用途への応用が期待されています。

化学的反応

ε-カプロラクトンの最も重要な反応は、ε-カプロラクタムへの変換です。これは、高温でアンモニアを作用させることで起こり、上記のように年間10億kg単位で生産されています。この反応は、以下のように化学式で表すことができます。

(CH₂)₅CO₂ + NH₃ → (CH₂)₅C(O)NH + H₂O

また、ε-カプロラクトンはカルボニル化と加水分解によってピメリン酸に変換することもできます。さらに、ラクトン環はアルコールや水などの求核試薬によって容易に開環し、最終的には6-ヒドロキシアジピン酸となります。この開環反応は、様々な誘導体の合成に利用できます。

まとめ

ε-カプロラクトンは、その優れた反応性と多様な用途から、化学工業において重要な役割を果たしています。特に、ε-カプロラクタムの原料としての需要が大きく、今後もその生産量は増加すると予想されます。一方で、生分解性ポリマーであるPCLの原料としての利用も拡大しており、環境問題への意識の高まりとともに、その重要性はさらに増していくと考えられます。将来は、新規材料開発への貢献も期待される化合物です。

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