ΜITRON

μITRON（Micro Industrial TRON）

μITRONとは、ITRON仕様の一部であり、主に組込みシステム向けのリアルタイムオペレーティングシステム（RTOS）を指します。この仕様は、特にマイコン向けに設計され、省資源を重視した構造を持っています。μITRONの名称は、最初のバージョンであるITRON2からの進化に伴い付けられたもので、後にμITRON3.0やμITRON4.0と名称が変わります。最新のバージョンは2011年にリリースされたVer.4.03.03であり、現在も多くの組込みシステムに利用されています。

機能概要

μITRONには以下のような主要な機能があります。

1. タスク管理機能

μITRONでは、タスクは他のオペレーティングシステムにおけるスレッドに相当し、プログラムが並列に実行されるための基本単位です。アプリケーションは少なくとも1つ以上のタスクで構成され、これにより複数の処理を同時に行うことが可能です。

2. タスク例外処理機能

タスク内で発生した例外を処理するための機能です。通常の割り込み処理とは異なり、タスクと同じコンテキストで例外を処理できるため、タスク例外処理ルーチンではすべてのサービスコールを使用できます。これにより、例外発生時の柔軟な対応が可能になります。

3. 同期通信機能

複数のタスク間のデータの送受信や実行順序の制御を行うための機能で、セマフォ、イベントフラグ、データキュー、メールボックスなど、計7種類の異なる方法が用意されています。これによりタスク間の調整が円滑に行えます。

4. メモリプール管理機能

動的なメモリの割り当てを行う機能で、C言語におけるmallocやfree関数に類似しています。μITRON4.0仕様には固定長メモリプールと可変長メモリプールの2種類があります。

5. 時間管理機能

システム時刻の管理や周期的な処理を行うための機能で、各種ハンドラを用いてタスクとは異なるコンテキストでの処理を行います。これにより時間に依存した処理が信頼性高く実行されます。

6. 割り込み管理機能

外部割り込みに応じたハンドラとサービスルーチンを管理する機能です。これにより、ハードウェアの割り込み要求に迅速に対応できます。

7. サービスコール管理機能

ユーザーが定義する拡張サービスコールを管理するための機能です。

プロファイルについて

μITRONには、主に二つのプロファイルがあります。

スタンダードプロファイル

このプロファイルはソフトウェアの移植性を高めることを目指し、静的APIに基づいてオブジェクトの生成が行われます。実装は各ベンダに依存しますが、互換性を持たせる試みがなされています。

自動車制御プロファイル

こちらは特に自動車制御に関連した機能に特化しており、メモリ使用量を抑えることを目的としています。使用可能なサービスコールには厳しい制限があります。

近年の動向

多くのシステムでの利用が進む中、μITRONの最新版を目指すTOPPERSプロジェクトが立ち上がるなど、オープンソースの取り組みも始まっています。また、T-Kernelへの移行が進められたり、家庭用ゲーム機の制御にも採用されるなど、その適用範囲は広がっています。

このように、μITRONは組込みシステムにおけるRTOSの重要な選択肢の一つとなっており、今後もその進化が期待されます。

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