Ψ

ギリシア文字のプサイ（Ψ, ψ）は、ギリシア語でψι, ψί (プスィ)と呼ばれ、英語ではpsi [ˈsaɪ] (サイ)と発音されます。この文字は、ギリシア文字の23番目に位置し、数価は700、音価は/ps/を表します。

起源

プサイはフェニキア文字には存在せず、ギリシアで新たに加えられた文字の一つです。初期のギリシア語では、/ps/の音はΠΣという2文字で表記されていましたが、その後、地域ごとに異なる表記法が採用されました。

クレタ島および周辺地域: テーラーやメーロスでは、初期のアルファベットと同様に「ΠΣ」の2文字で表記し、新たな文字は追加されませんでした。
西方ギリシア文字: エウボイアやギリシア本土の大部分、西部植民地では「ΦΣ」の2文字で/ps/を表し、「Ψ」は/kʰ/の音を表すために使われていました。
東方ギリシア文字:
アッティカやキクラデス諸島では、「ΦΣ」の2文字で/ps/を表していました。
ペロポネソス半島北東部やアナトリア半島のイオニア都市では、「Ψ」単独で/ps/を表していました。

これらの地域差が生じた理由は明確ではありませんが、松本克己氏の研究によると、当初はΧとΨの両方が/kʰ/の音を表すために使用され、後続母音によって使い分けられていた可能性が指摘されています。その後、どちらかの文字に統一され、使われなくなった方の文字が複合子音の表記に割り当てられたと考えられています。

後に、東方ギリシア文字の一種であるイオニア式アルファベットによって表記が統一され、「Ψ」と書かれるようになりました。西方ギリシア文字から発展したラテン文字には、「Ψ」に相当する文字は存在しません。クラウディウス帝の時代に、/ps/を表す文字が考案されましたが（クラウディウス文字）、短期間しか使用されませんでした。

プサイの字形の起源については、議論が分かれています。古代の文字名称はプセー(ψεῖ)であり、これはπ（ペー）、φ（ペー）、χ（ケー）のパターンに従ったものです。紀元前4世紀末に、ειが/iː/と発音されるようになり、その影響で文字名称もψῖとされるのが一般的になりました。近代西洋諸言語における名前は、この発音に基づいています。

記号としての用法

プサイは、様々な分野で記号として用いられています。

[心理学]]: [[心理学]や[超能力]を包括的に表す記号として「ψ」または「psi」と表記されることがあります。
量子力学: 波動関数を表す記号として、φとともに使用されます。大文字のΨは系全体の波動関数を、小文字のψは一粒子の波動関数を表すことが多いです。
数学: フィボナッチ数列の逆数和を表す記号として使われます。

符号位置

プサイは、Unicodeにおいて以下の符号位置を持ちます。

大文字のΨ: U+03A8
小文字のψ: U+03C8

このように、プサイはギリシア文字としての役割だけでなく、様々な分野で重要な記号として広く利用されています。その歴史と多様な用途は、文字文化における興味深い一例と言えるでしょう。

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