ああ爆弾

ああ爆弾：奔放な音楽と痛快な復讐劇が織りなす、岡本喜八監督作品

1964年、東宝が製作した岡本喜八監督作品『ああ爆弾』は、単なる任侠映画の枠を超えた、異色の和製ミュージカル映画として知られています。ジャズ、ロック、浪曲、狂言、そしてお経と、多様な音楽と芸能が、映画全体に独特の色彩とリズムを与えています。

本作の原案は、アメリカのミステリー作家コーネル・ウールリッチの短編小説「万年筆」(Fountain Pen)です。この小説を基に、岡本喜八監督は独自の解釈を加え、日本の社会風刺とエンターテインメント性を融合させた、痛快な物語を構築しました。

物語の中心となるのは、大名組六代目組長・大名大作です。出所した大作は、爆弾作りの名人である太郎と共に、かつての縄張りを奪還しようとします。しかし、そこには市議会議員選挙に出馬している矢東彌三郎がおり、大作の組事務所、自宅、そして妾までもが奪われていました。

復讐を決意した大作は、太郎に万年筆に爆弾を仕掛けるよう依頼します。しかし、この爆弾は矢東の手に渡る前に、次々と別の人物へと渡っていき、予期せぬ展開を招きます。銀行支店長、掃除婦とその息子、そして大作の息子と、爆弾は人の手を転々としていきます。この、予測不能な爆弾の旅路は、観客を最後まで飽きさせないスリリングな展開を作り出しています。

キャストには、伊藤雄之助、越路吹雪、高橋正といった、当時のスター俳優たちが名を連ねています。それぞれの個性豊かな演技が、物語に深みと華やかさを添えています。また、音楽面では佐藤勝が担当し、映画全体を彩る多彩な音楽が、物語の雰囲気を効果的に高めています。

『ああ爆弾』は、単なる任侠映画やミュージカル映画としてだけでなく、岡本喜八監督の独創的な演出センスと、社会への痛烈な風刺が光る作品です。音楽と物語、そして俳優たちの演技が三位一体となり、観客に強烈な印象を残す、忘れがたい一本となっています。

さらに興味深いのは、本作が同時期に公開された大映のミュージカル映画『アスファルト・ガール』と、いわばミュージカル映画の覇権を争う形となった点です。この競演が、当時の映画界にどのような影響を与えたのかを考えるのも、本作を鑑賞する上での興味深い点と言えるでしょう。

岡本喜八監督の独特な世界観、そして豪華キャストと音楽が織りなす『ああ爆弾』。日本の映画史に燦然と輝く、異色の和製ミュージカル映画として、今なお高い評価を受けています。興味のある方は、ぜひ一度鑑賞してみてはいかがでしょうか。 様々な要素が複雑に絡み合い、予測不可能な展開に目が離せない、まさに岡本喜八監督らしい作品と言えるでしょう。

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