伊藤雄之助

伊藤雄之助の生涯と業績

伊藤雄之助（いとう ゆうのすけ、本名：伊藤嘉朗）は、日本の映画界で名を馳せた俳優である。1919年8月3日、東京市浅草区で出生し、父は著名な歌舞伎俳優の初代澤村宗之助であった。芸能一家に生まれ育った伊藤は、幼少期から舞台の世界に親しみながら成長した。

幼少期と教育

4歳の頃、芸名“澤村雄之助”を名乗り、父の舞台で初めてステージに立ったものの、父はその後急逝し、彼は父の不在と共に育つこととなった。母の教育熱心な方針により慶應義塾幼稚舎に入学し、成績優秀で将来は教育者を志していたが、母の死により学業を断念。兄弟と共に「澤村兄弟プロダクション」を組織し、芸能活動を再開する。

劇団への参加とメンタルの苦悩

1934年、東京宝塚劇場の公募に合格し、東宝専属の俳優となるも、そこでは先輩役者との対立に苦しむ。特に六代目坂東蓑助からの厳しい指導によりノイローゼに陥ったこともあったが、若手勉強会への参加が転機となり、演技の喜びを再発見する。

戦争とその後の活動

1940年に陸軍に入隊し、中国大陸での兵役を経験。1943年に除隊後、活動を再開し、演劇研究所でスタニスラフスキー・システムを学んだ。映画デビューは1932年の『少年諸君』だが、戦後に本格的な活動を開始。特に1949年の『野良犬』（黒澤明監督）ではその存在感を発揮した。

映画キャリアと代表作

伊藤は、新東宝や綜芸プロに所属し、数々の作品に出演した。市川崑監督の『プーサン』（1953年）は代表作の一つであり、社会風刺をテーマにしたこの作品で俳優としての地位を確立した。また、多くの映画で名脇役として活躍し、特に『椿三十郎』ではその印象深い演技が光った。さらに『気違い部落』や『ああ爆弾』では主演を務めた。

健康の戻りと晩年

1980年、歌舞伎座での舞台中に脳溢血で倒れ、半身不随になるもリハビリを重ね、翌年には映画『橋のない川 第二部』で俳優活動を再開した。その後も様々な映画やドラマに出演したが、1980年3月に心臓発作により62歳で死去した。遺作となった『戒厳令の夜』はその死の直前に発表された作品であった。

私生活や趣味

趣味としては油絵を描くことがあり、スケッチをすることを楽しんでいた。また、彼の芝居や作品への執念は強く、同僚への影響も大きかった。冷遇を受けた幼少期からの経験が、彼の演技やキャラクターに深いものを与えたと言われている。

まとめ

伊藤雄之助は、日本の映画界において非常に影響力のある俳優であった。彼の多面的なキャリアや、波乱に富んだ人生は、今も多くの人々に記憶され続けている。彼の人生は演技への情熱の象徴であり、遺した作品は今も人々に感動を与えている。

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