あおぞらくん

福井市の買い物バス「あおぞらくん」：その歴史と終焉

福井県福井市新保・大和田地区は、20世紀末以降、大型商業施設が相次いで進出し、北陸地方有数の商業地域へと発展しました。しかし、この地域は公共交通機関が不便で、商業施設間の移動にも困難が伴っていました。特に、マイカーを持たない高齢者や子育て世帯にとって、買い物は大きな負担となっていました。

こうした状況を背景に、えちぜん鉄道と地域の商業施設は、買い物客の利便性向上を目指し、2004年11月、買い物バス「あおぞらくん」の実験運行を開始しました。運行主体はえちぜん鉄道、運行委託は福井交通が担当し、地域の商業施設が協賛するという体制でした。

当初は単一方向の巡回ルート、5停留所での運行でしたが、2005年11月には両方向巡回ルート、7停留所へと拡大。運行経路は、越前新保駅を中心としたループ状で、アピタ、エルパ、ワイプラザなど主要な商業施設を結んでいました。

「あおぞらくん」の運行開始は、越前新保駅のレンタサイクル利用状況を分析した結果によるものでした。多くのレンタサイクル利用者が、勝山永平寺線沿線から新保・大和田地区への買い物客であったことから、この地域への交通手段の不足が明確になったのです。レンタサイクルは駅から商業施設まで距離があるため、高齢者や乳幼児連れには不便であり、「あおぞらくん」はこうした課題解決の一助となることを目指しました。

「あおぞらくん」の運賃は1乗車200円（小学生以上）と設定され、越前新保駅とバス車内で乗車券を購入できました。また、かつては1日乗車券も販売されていました。運行は土曜日と休日のみで、トヨタ・ハイエース車両を使用。ジャンボタクシー2台による交互運行で、30分間隔の運行スケジュールが組まれていました。

しかし、2021年4月1日からは運行経路の見直しが行われ、平日の運行が中止されました。そして、2024年1月3日、長年にわたる運行に幕を閉じ、路線は廃止されました。廃止の背景には、利用者数の減少や運行コストの問題などが考えられます。

「あおぞらくん」は、公共交通の空白地帯における地域活性化の取り組みとして注目されてきました。運行開始から廃止まで、地域住民の生活に密着した存在でしたが、その運行終了は、公共交通の維持の難しさを改めて示すものとなりました。一方で、2008年からは京福バスによる「大和田エコライン」（のちの「大和田大学病院線」）も運行開始しており、運賃体系も競合関係にありました。この路線は福井駅から、あるいは田原町駅からフェアモール福井への割引運賃が適用され、「あおぞらくん」よりも安価な選択肢を提供していました。

「あおぞらくん」の運行終了は、地域住民にとって大きな損失ではありましたが、この事例は、地方における公共交通のあり方について、改めて考えるきっかけを与えてくれるでしょう。今後の地方都市における公共交通のあり方について、持続可能なシステムの構築が求められています。

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