あかし (海洋観測艦・2代)

海洋観測艦「あかし」（AGS-5107）

海上自衛隊の新たな海洋観測艦「あかし」は、日本周辺海域における詳細な海洋データの収集を任務とする重要な艦艇です。正式なローマ字表記は「JS Akashi」となり、海上自衛隊における艦番号はAGS-5107が付与されています。本艦の登場は、日本の海洋における安全保障や科学的調査に貢献する海上自衛隊の能力を一層強化するものとして注目されています。

艦名の由来と歴史

「あかし」という艦名は、兵庫県にある美しい景勝地として知られる明石海岸に由来しています。海上自衛隊の艦艇は、多くが山や川、地方の地名、あるいは古都などにちなんで命名される伝統があり、本艦もその慣例に則っています。興味深いことに、「あかし」あるいは「明石」の名を持つ日本の艦艇としては、本艦で四代目にあたります。これまでの歴史を振り返ると、旧日本海軍の防護巡洋艦「明石」、そして工作艦「明石」が初代、二代目として存在しました。海上自衛隊においても、本艦の前に同名の海洋観測艦「あかし」（AGS-5104）が存在しており、本艦はその後継、すなわち三代目「あかし」に続く四代目として、その名跡を受け継ぐことになります。

建造計画とプロセス

本艦は、中期防衛力整備計画に基づき策定された令和4年度計画において建造が承認された、3,500トン型海洋観測艦の5107号艦として位置づけられています。その建造は、国内有数の造船メーカーである三菱重工業が担当し、同社の下関造船所江浦工場にて行われました。船体建造の第一歩となる起工式は、2023年5月に執り行われ、本格的な建造が開始されました。その後、船台での作業を経て、2025年5月29日には、同じく江浦工場において命名・進水式が挙行されました。この式典で正式に「あかし」と命名され、艦番号AGS-5107が付与されるとともに、初めて水面に船体が浮かべられました。本艦の建造にかかる費用は、総額283億円と公表されており、最新の海洋観測技術や艦艇設計が盛り込まれていることが伺えます。

今後の展望と任務

進水を果たした「あかし」は、今後、就役に向けて最終段階へと移行します。船内の主要機器の設置や配線、居住区の整備といった艤装工事が進められます。これらの作業が完了した後、各種の性能確認を行うための海上公試が実施される予定です。これらの工程を経て、本艦が海上自衛隊に引き渡され、正式に就役するのは2026年3月頃が見込まれています。就役後、「あかし」は海上自衛隊の海洋業務・対潜支援群に属する第1海洋観測隊に編入される予定です。そして、既存の海洋観測艦である「わかさ」（AGS-5104）の後継として、その任務を引き継ぐことになります。主な配備先、すなわち母港は横須賀となる模様です。海洋観測艦は、海底地形、海流、水温、塩分濃度といった海洋環境に関する詳細なデータを収集することを主要な任務としています。これらのデータは、潜水艦の作戦行動を支援するための情報収集や、対潜作戦における音響環境の把握、さらには機雷戦、掃海活動、災害派遣活動など、海上自衛隊の多岐にわたる任務遂行に不可欠な情報基盤を提供します。「あかし」は、最新鋭の観測機器と船体設計により、これらの重要な海洋観測任務を効率的かつ高精度に遂行することが期待されています。これにより、日本の海上防衛能力および海洋科学調査能力の向上に貢献していくことでしょう。

まとめ

海洋観測艦「あかし」（AGS-5107）は、日本の防衛と海洋科学にとって重要な役割を担う最新鋭艦です。歴史ある名を継承し、最新の技術を搭載して建造が進められています。2026年の就役に向けて準備が進められており、将来にわたって日本の海域における安全と安定、そして科学的知見の深化に貢献していくことが期待されます。

もう一度検索