あかね (高速フェリー)

あかね：佐渡汽船の高速カーフェリー

あかねは、佐渡汽船が2015年から2021年まで、主に小木港と直江津港を結ぶ小木直江津航路で運航していた双胴型高速カーフェリーです。その概要、沿革、船体構造について解説します。

概要

航路の変遷と「あかね」導入の背景

佐渡汽船の小木直江津航路は、輸送人員の減少に伴い赤字が続いていました。2007年からは航路存続に関する議論が行われ、1989年から運航されていたジェットフォイルも2003年に終了。2008年にはカーフェリー「こさど丸」が引退し、「こがね丸」1隻体制で運航されていました。

しかし、小木直江津航路が国道350号の海上区間であること、2015年の北陸新幹線金沢開業を控えていることから、新潟県、佐渡市、上越市が航路存続に向け協議。社会実験やパブリックコメントを経て、新造の高速フェリーを導入する方針が決定しました。

船名の由来と導入

船名は公募により決定。「あかね」という名前は、日本海の夕日や朱鷺色、おけさ柿など、佐渡をイメージさせることに由来します。購入費用は約60億円で、上越市からの補助金も活用されました。

2015年4月21日より、1日2往復のダイヤで運航を開始。所要時間は100分と、従来のカーフェリーより60分短縮されました。これにより、「こがね丸」は引退し、売却されています。

短期間での売却

2018年には推進装置の一部にクラックが発見され、修理のために入渠。その後、双胴船特有の乗り心地の悪さや修繕費、新型コロナウイルス感染症の流行による輸送低迷もあり、2020年には売却方針が決定。わずか5年で佐渡を去ることとなりました。後継にはジェットフォイルが使用されています。

2021年6月にはスペインの企業FRSに売却され、同年7月27日にスペインへ向けて出港。上越市は、補助金のうち未償却分にあたる約1億7590万円の返還を求めています。

スペインFRSでは「Levante Jet」という名称で、アルヘシラス～セウタ間で運行されています。

沿革

2013年1月：小木直江津航路への新造高速フェリー投入が決定
2014年9月：船名が「あかね」に決定
2015年3月24日：オーストラリアのインキャット造船所を出発
2015年4月6日：「あかね」が直江津港に初入港
2015年4月7日：乗員訓練のため小木港へ初入港
2015年4月19日：直江津港で見学会および試乗会を実施
2015年4月20日：小木港で見学会および試乗会を実施
2015年4月21日：直江津小木航路に就航（1日2往復）
2021年3月20日：両津発新潟着便にて定期就航終了
2021年6月26日：スペイン企業への売却が決定
* 2021年7月27日：直江津港から出港

船体

特徴

「あかね」は、過去に青函航路で運航されていた「ナッチャンRera」「ナッチャンWorld」と同じ、オーストラリアのインキャット社が建造したウェーブピアサー（波浪貫通型双胴高速船）です。

新造決定以前には、「ナッチャン」の佐渡汽船への売却話もありましたが、規模が輸送実績に見合わないため実現せず、一回り小型のウェーブピアサーを新造する方針となりました。

構造

ハルナンバーは068で、初の85m型。車両甲板、船室がそれぞれ1層構造で、車両甲板は搭載車両によって使い分けることが可能です。車高の高い車両を搭載する際は床板を収納し、低い車両を搭載する際は床板を降ろして2段に搭載します。

カーフェリー用の既存港湾設備を利用できるよう、大型の船尾ランプを装備。航送車は船尾ランプから乗船・下船します。船体には茜色のラインと羽ばたくトキが描かれ、喫水線以下は青色です。

客席

客席は2クラス制で全席指定。前方には一等座席「ときクラス」（70席）、後方には二等座席（602席）が配置されています。船室最後方には露天デッキ、ペットルームも設けられています。2015年11月には、右舷後部に「じゅうたんコーナー」が新設されました。

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