あけぼの (人工衛星)

あけぼの (EXOS-D)

あけぼの（EXOS-D）は、日本の宇宙科学研究を担う旧文部省宇宙科学研究所によって打ち上げられた地球磁気圏観測衛星です。この衛星は、日本電気により開発・製造され、文部省の第12号科学衛星として位置付けられました。あけぼのの主な目的は、オーロラの観測であり、オーロラは地球周辺に存在する荷電粒子が加速され、大気圏に降り注ぐ現象です。これらの加速メカニズムは未解明な点が多く、あけぼのはその解明を目指して設計されました。

ミッションと運用

あけぼのは、特にオーロラの形成メカニズムを解明するための軌道をとり、地球周辺の環境やエネルギーの輸送過程を観察できるように設計されました。2011年以降は、科学コミュニティからの要請を反映し、ヴァン・アレン帯の内部磁気圏現象と太陽活動との関連性を探ることを主な目的として運用されました。

衛星は1989年2月22日に内之浦宇宙空間観測所からM-3SIIロケットによって打ち上げられ、近地点272km、遠地点10,472km、軌道傾斜角75.1度で運用を開始しました。観測機器は順次起動され、観測体制に入ったのち、データ取得率向上のために複数の宇宙局のアンテナを活用しました。これには、カナダのプリンスアルバートやスウェーデンのエスレンジ、さらには南極の昭和基地に新たに設置されたアンテナも含まれました。

あけぼのは、太陽地球系物理学国際共同観測計画（ISTP）の前奏とも言える存在で、GEOTAILやClusterなど他国の衛星と協力した観測が行われました。設計寿命は1年でしたが、宇宙理学委員会の審査に基づき、2006年、2010年、2013年には運用延長が決定され、最終的には2015年までの26年間にわたって活躍しました。

機体と技術

あけぼのは、特に放射線強度が高い宙域を通過するため、耐放射線設計が施されており、従来の10倍の放射線に耐えることができるように作られています。全体の表面が電気伝導性を持つことで、帯電・放電にも対応できるように設計されています。また、高感度の磁場計測器（MGF）のためには、新しい伸展マスト方式が導入されています。この技術は後の衛星にも応用されています。

姿勢制御は、スピン安定方式と磁気トルクによって行われ、本機は3段構成のM-3SIIにアポジキックモーターを加えた形で打ち上げられました。このキックモーターは伸展ノズルを採用し、M-Vの開発に必要な基礎データを収集する役割も果たしました。

観測機器

あけぼのにはさまざまな観測機器が搭載されており、以下の機器が主要な役割を果たしました。

• - 電場計測器（EFD）：劣化により運用停止。
• - 磁場計測器（MGF）。
• - 低エネルギーイオン検出器（LEP）。
• - 熱的・非熱的イオン質量分析器（SMS）：カナダ製で劣化により運用停止。
• - 熱的電子検出器（TED）。
• - ELF・VLF波動検出器。
• - HF波動検出器・トップサイドサウンダー（PWS）。
• - 可視・紫外オーロラ撮像機（ATV）：打ち上げ後1年で劣化による運用停止。
• - 放射線モニタ（RDM）。

ただし、各観測機器は劣化があり、特に最初の数年で機能を喪失したものもあります。

科学的成果

あけぼのの観測データに基づく研究は多く、2015年4月時点で合計311件の査読論文が発表され、修士論文や博士論文も数多く執筆されました。これらの成果は、2016年に打ち上げ予定のジオスペース探査衛星あらせの観測計画やデータ解析にも利用されることが期待されています。最終的に2015年4月23日、あけぼのはその運用を終了しました。

もう一度検索