あらせ

あらせ（ERG衛星）

あらせは、宇宙科学研究所が開発したジオスペース探査衛星で、2016年12月20日に打ち上げられました。この衛星は、計画名を英語で表記すると「Exploration of energization and Radiation in Geospace」（ERG）となり、内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケットによって打ち上げられました。あらせは「ひさき」に続く小型科学衛星シリーズの2機目として位置付けられています。

この衛星の主な目的は、地球近傍の放射線帯、特にヴァン・アレン帯における高エネルギー粒子の生成や消滅、さらには磁気嵐の発達メカニズムを理解するための観測を行うことです。打ち上げは当初2015年度に予定されていましたが、技術的な課題のため2016年度に延期されました。そして、2016年の12月20日20時00分（日本標準時）に遂に宇宙へと旅立ちました。

衛星の愛称「あらせ」は、荒々しい高エネルギー粒子に満ちた宇宙の「荒瀬」という意味から名付けられ、肝付町の「荒瀬川」に由来する神話や伝説にもちなんでいます。コーラスという高周波の電磁波も観測できるため、衛星の特点をしっかりと表現しています。

機体構成

あらせには、NECとJAXAが共同で開発したSPRINTバスが採用されており、機体の重量は350kgです。衛星に搭載されているコンピュータシステムは、高信頼性のリアルタイムオペレーティングシステム（RTOS）「T-Kernel 2.0 AeroSpace（T2AS）」が使用されています。これは、航空宇宙分野に特化して設計されたもので、様々な条件下での安定した動作が期待されています。

観測機器

あらせには、さまざまな観測機器が搭載されています。具体的には、低エネルギー電子分析器（LEP-e）、低エネルギーイオン質量分析器（LEP-i）、中間エネルギー電子分析器（MEP-e）、中間エネルギーイオン質量分析器（MEP-i）、高エネルギー電子分析器（HEP）、超高エネルギー電子分析器（XEP）などがあります。さらに、磁場観測器（MGF）、プラズマ波動・電場観測機器（PWE）、そしてソフトウェア型波動粒子相互作用解析装置（S-WPIA）も搭載され、地球近傍の宇宙環境について多角的な観測を行います。

運用経歴

あらせの運用は、2007年度から開始されました。初めは戦略的開発研究経費を用いて、衛星系の検討や基礎設計が行われ、その後、様々な段階を経て2012年に正式なジオスペース探査プロジェクトとして認められました。2014年にはミッション部の総合試験がスタートし、2015年には重大な試験が実施されました。

2016年には、相模原キャンパスで公開イベントが行われ、いよいよ12月20日に待望の打ち上げを迎えました。打ち上げ後は、近地点高度約460km、遠地点高度約32,110kmという軌道へと遷移し、さまざまな観測を行う準備が整いました。

特に、2020年にはクリティカル運用期間を終了し、定常運用が開始されました。これにより、あらせは宇宙環境についての貴重なデータを収集し続け、科学的な研究に寄与する役割を果たしています。あらせのミッションは、宇宙の理解を深めるための一翼を担っているといえるでしょう。

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