あさがおのポートレート

『あさがおのポートレート』は、漫画家・立川恵氏の初期読切作品であり、初期の代表作の一つとして知られています。1992年に講談社の「なかよし」8月増刊号に掲載され、立川氏のデビュー後3作目にあたる作品です。人魚姫をモチーフにしたファンタジー要素と、切ない恋模様が織りなす物語は、発表当時から高い評価を得ていました。

特に、立川氏の初期作品群の中では、その完成度の高さから最も評価の高い作品の一つとされています。後に『熱烈台風娘』や『夢食案内人』、『怪盗セイント・テール』といった代表作が登場する以前は、本作が立川氏の代表作として語られることもありました。

KCなかよし『怪盗セイント・テール』単行本第1巻に収録されており、現在でも多くのファンに愛され続けています。

あらすじ

物語の舞台は、とある公園。ジャングルジムの一番低い場所に咲く、小さな朝顔が主人公です。その朝顔は、毎日公園を通るアイスクリーム屋の男の子に恋心を抱いていました。ある日、朝顔は太陽にお願いし、たった一週間だけ人間の姿に変えてもらうことに。

人間の姿になった朝顔は「沙綾」と名乗り、アイスクリーム屋の男の子「一馬」との距離を縮めようとします。しかし、沙綾にはタイムリミットがありました。一週間のうちに恋を実らせなければ、空に溶けて消えてしまうのです。果たして、沙綾は一馬との恋を成就させ、幸せを掴むことができるのでしょうか。

登場人物

沙綾（さあや）

公園のジャングルジムに咲く、小さな朝顔の精。毎日通るアイスクリーム屋の男の子・一馬に恋をし、太陽の力で人間の姿に変身します。人間の姿になる代償として、蔓を家と家族に、葉を住む場所に、そして花びらを魔法の力と引き換えにしました。もし一週間のうちに恋が実らなければ、朝顔に戻ることもできず、消滅してしまいます。純粋で素直な性格の持ち主です。

一馬（かずま）

公園でアイスクリームを売る少年。画家を目指していますが、家族からは反対されています。絵具を買うため、アルバイトをしています。心優しい性格ですが、女性に対しては少し苦手意識を持っています。沙綾の純粋さに触れ、次第に心を開いていきます。

『あさがおのポートレート』は、短い期間でありながらも、精一杯生きようとする沙綾の姿を通して、命の尊さや、人を愛することの素晴らしさを教えてくれる作品です。また、一馬の夢を追う姿は、読者に勇気を与えてくれます。儚くも美しい、朝顔の恋物語は、いつまでも心に残るでしょう。

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