あそBOY

あそBOY：阿蘇を駆け抜けたSL列車の記憶

「あそBOY」は、1988年8月28日から2005年11月27日まで、九州旅客鉄道（JR九州）が豊肥本線の熊本駅 - 宮地駅間で運行していた臨時快速列車です。阿蘇の雄大な自然の中を走る列車として、多くの鉄道ファンや観光客に親しまれました。

誕生の背景

SL復活のきっかけは、1987年7月4日に北九州市長とJR九州社長との間で交わされた約束でした。門司港開港100周年と九州鉄道100年を記念するイベントとして、蒸気機関車の復活が計画されました。列車名は、阿蘇の地形と西部劇を彷彿とさせる風景から、「あそBOY」と名付けられました。これは、当時のJR九州の幹部であった唐池恒二氏による命名です。

車両と編成

「あそBOY」の牽引機関車は、8620形蒸気機関車の58654号機でした。客車は、アメリカ西部開拓時代をイメージして改造された50系700番台「ウエスタン風客車」が使用されました。3両編成で、展望デッキやビュッフェが設けられ、乗客は快適な旅を楽しめました。

1号車：オハフ50 701（宮地方に密閉式展望デッキあり）
2号車：オハ50 701（ビュッフェあり）
3号車：オハフ50 702（熊本方に密閉式展望デッキあり）

運行の様子

「あそBOY」は、毎年3月から11月にかけて、週末を中心に1日1往復運行されていました。全車指定席で、指定席料金は他の快速列車よりも高めに設定されていました。また、立野 - 赤水間にあるスイッチバック区間では、推進運転により後進する様子を見ることができました。年間数日程度は「SL人吉号」として肥薩線を人吉駅まで運行することもありました。

終焉とその後

SLの老朽化と部品の破損により、SL牽引による「あそBOY」は2005年8月28日をもって運行を終了しました。その後、ディーゼル機関車 (DL) 牽引による「ディーゼルあそBOY」が同年7月2日から11月27日まで運行されました。その後は、2006年から後継列車としてキハ58系気動車による臨時快速列車「あそ1962」が運行されましたが、車両の老朽化のため廃止。2011年からはキハ183系気動車による臨時特急列車「あそぼーい!」が運行を開始し、現在に至ります。

沿革

1988年（昭和63年）8月28日：「SLあそBOY」が運行開始。
1988年（昭和63年）10月9日：「SL人吉号」が肥薩線で運行開始。
1999年（平成11年）7月18日 - 8月31日：「銀河鉄道999号」として運行。
2005年（平成17年）6月：「SLあそBOY」の運行終了発表。
2005年（平成17年）7月2日：DL牽引による「ディーゼルあそBOY」が運行開始。
2005年（平成17年）8月21日：「SL人吉号」が運行終了。
2005年（平成17年）8月28日：「SLあそBOY」が運行終了。
2005年（平成17年）11月27日：「ディーゼルあそBOY」が運行終了。
2023年（令和5年）9月22日：この日限りで「SLあそBOY」が復活運行。

参考文献

大塚孝「SLあそBOY 17年間の記録」 交友社『鉄道ファン2005年10月号』 No.534　pp.128 - 133

関連項目

あそ1962
SL人吉
蒸気機関車牽引列車
動態保存中の蒸気機関車
日本の蒸気機関車史

「あそBOY」は、SLの勇姿と阿蘇の自然を満喫できる列車として、多くの人々の心に刻まれました。その記憶は、後継の「あそぼーい!」に受け継がれ、今も阿蘇路を駆け抜けています。

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